マレーシア映画「グブラ」から見えた、マレーシアの多民族さと格差。ピースボートで寄港した半日の思い出も重ねて。
先日、とある映画の上映会&シンポジウムに行きました。地元の映画館にビラが置いてあって興味を持った、東南アジアの映画のシンポジウム・上映会でした。
これまで東南アジアの映画は見たことがなく、いろんなことが新鮮でした。
見た映画は以下の2作。
- 「GUBRA」2005年/マレーシア/ヤスミン・アフマド監督
- 「At the horizon」2011年/ラオス/アニサイ・ケオラ監督
このうち前者の作品を見て感じたことを、3年前ピースボートの旅で寄港したマレーシアで見たものを重ねつつ、振り返ってみます。
映画「GUBRA(グブラ)」
ヤスミン・アフマド監督(1958〜2009)の作品。彼女はCMの制作を長らくしていましたが、映画も作るようになり、この作品は彼女の映画としては3作品目だそう。
また、この作品は、主人公の一人・少女オーキッドの半生を描く3部作の2本目だそうです。1本目「細い目」は先日まで日本国内でも劇場公開されていたとか。
題名の「GUBRA」とは、“混乱していて、どこに向かうべきか定まらない状態“を指す言葉だそうです。
当日もらった資料で、登場人物がまとめられています。
いろんなストーリーが複合的に進んでいくのですが、話の軸になるところとしては
- オーキッドの父が糖尿病で入院
- オーキッド:事故で亡くした昔の恋人の兄・アランと病院で出会う。夫の浮気を知る。
- アラン:両親(華人)は仲が悪く、夫婦喧嘩で父が怪我をして入院したため、病院に来ていた
- 礼拝所管理人ビラルと、妻マズ:売春婦のことも隣人として気にかける。
- 売春婦ティマ:小学生の息子がいるが、病にかかる。元夫(?)にお金を取られかける。
というところかと。
そして描かれていることの要点としては
などが挙げられます。
3部作の2作目から見たということや、登場人物の多さ、画質や見慣れなさからそれぞれの顔が認識しづらいというのもあって、ストーリーを追うのがちょっと難しかったです。また1作目からみてみたら、印象が変わりそう。
映画から見えた、マレーシアの多民族さと格差
多民族性
映画をみてまず印象に残ったのは、多民族性。上の資料でも紹介されていますが、マレーシアは多民族国家で、
などが暮らす国。宗教も多様で、マレー人はイスラームで、華人は仏教、インド人はヒンドゥー教などなど。実際3年前に、マレーシアのある町でも、教会・モスク・ヒンドゥー寺院などがそれぞれすぐ近くにあるのを見て驚きました。
港の近くの町はインド系の住民が多かったようで、一足先に次の寄港地・インドに来た気分も味わえました。
しかし映画を見た後のシンポジウムでの話によると、少し様相が違いそうでした。
マレーシアの憲法では宗教の自由は認められているし、建前上はみんなそう。だけど本音では、多数派のマレー人は「イスラームだけが正しい」と内心思っている節があるそうです。
そんな雰囲気の社会で、この映画は最後に「ランプは違っても、光は同じ」というメッセージを映し、登場人物がそれぞれの宗教のやり方で祈る姿を映します。分断が進むこの時代に、綺麗事かもしれないけど正論・理想を正面から発信したのは画期的です。
また、印象的だったのは、オーキッドが「この国じゃ、ラジオをつければいろんな言葉や音楽が聴ける。他の国じゃ1つの言葉、1つの音楽しか聞けないなんて、つまらないよね」というようなことを言っているシーン。多民族・多文化に対しての映画の姿勢が表れています。
経済格差
また、経済格差も映画の随所で垣間見えました。
上流層だと、英語で会話をし、広い家に住み、車も持っている。お手伝いさんもいる。でも一方で、助け合って慎ましく暮らしている人ももちろんいる。シングルマザーもいる。
こう書くと日本も似たようなものにも思えますが、「話す言葉が違う」という点は日本ではなさそうだし、実際その差はマレーシアの方が大きくなってきていると思います。
マレーシアはクアラルンプールなどの大都会もできているし、私が3年前見た町の様子はそれなりに整備されていたと思うし、賑わっていて綺麗でもありました。
でもその町へ出るために港から電車に乗っていて、車窓に見えた村は、地面は土で小さい家が並んでいて。インフラもそこまで整っていなさそうでした。
そういう様子=貧しいと断定したくはないけれど、クアラルンプールのように高層ビル群(行ってはいませんが)もある国と同じ国とは思えないくらい、経済的な差は強く感じました。村の様子は「一昔前」というような感じで、時代が違うような感じがしました。
そんな国内の“歪み“を、少しは切り取っていたのがこの作品だったのかもしれません。
おまけ:ブルーモスクに行ったときのこと
ピースボートでマレーシアのポートクランに寄港した時は、シャー・アラムという町にある、世界で2番目に大きいモスク・通称ブルーモスクに行きました。その様子を少し写真で紹介します。
モスクは遠くからでもその異様な大きさがわかるほど。ちょうどドーム部分を少し工事していた時でしたが、綺麗さや大きさは十分に味わえました。一度に6000人(?)が礼拝できるそうです。
観光客として訪れると、スタッフの方がガイドツアーをしてくれます(無料)。なので、じっくりのんびり見るという感じではありませんでしたが、普段礼拝をどうやって行うか教えてもらったりできました。女性はスカーフや上着を貸してもらい、中に入ることができます。
床や壁の装飾も綺麗でした。
まとめ
日本でなかなか見る機会のない映画を見れて、久々にこの日のことを思い出すこともできて、良い機会になりました。映画は世界への窓だといつも思っていますが、いろんな映画を見るようにしたいなと改めて思いました。
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