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26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

結婚、インドの慣習、家族の死…環境に振り回されながらも幸せを掴むインドの少女。小説「家なき鳥」感想。

インドの少女が13歳で結婚させられ、そこから巻き起こる物語を描いた小説「家なき鳥」を読みました。インドが舞台になった小説はおそらく初めて読んだのですが、主人公と同世代のティーン向けの作品でもあると思うので読みやすかったです。

あらすじや感想を書いてみます。

家なき鳥

家なき鳥

 

 

あらすじ

  • 原題:Homeless Bird
  • 作者:グロリア・ウィーラン
  • 日本語版出版:2001年

インドの田舎で、両親と兄二人と貧しい暮らしをしている少女コリー。13歳になり、見知らぬ男子と縁談が決まった。結婚式でいざ顔を合わせた婿、ハリは明らかに病気。ハリの両親は、結核にかかっているハリを聖地バラナシに連れていくお金のため、持参金目当てで結婚させたのだった。

主な登場人物はこんな感じ。

  • コリー:13歳で結婚。
  • サス(義母):コリーにとても意地悪に当たる
  • サッサー(義父):学校の先生。
  • ハリ:コリーの旦那。結核で弱っている。
  • シャンドラ:ハリの妹。コリーと仲良くなる。
  • ラージ:聖地の街ヴリンダーヴァンで、人力車の車夫として働いている。 

ではこれからはネタバレもしつつ感想を。

 

感想

大きな環境の変化が突然さらっと起こる。主人公と一緒に振り回される感覚に。

全く先が読めないコリーの生活を、一緒に体験しているような感覚になりました。そして、ほぼ予感もなく訪れる転機。

  • ハリは聖地バラナシで亡くなる
  • のちにサッサーも亡くなる
  • ヴリンダーヴァンで、サスに置いていかれる

「うそ?!」というようなことが、さらっと描かれていきます。呆気なさすぎて、ついていけない感覚にもなりますが、それはきっとコリー自身も同じなんだろうなあと思いました。

結婚したのが13歳と、まだまだ世の中のことがわからなかったり、自分で手に負える部分が多くはない年齢だから、なおさら振り回される感覚があるんだろうなあ。しかも出来事一つ一つが、どんな年齢の人にとっても衝撃的なこと。

 

「未亡人」であることの重さ。

コリーの旦那となったハリは、結婚してすぐ亡くなってしまいます。なのでコリーはすぐに「未亡人」になってしまいます。

インドの伝統的・保守的な地域では、未亡人には様々な制約があります。

  • 身に着けるもの(サリーの色、アクセサリーなど)
  • 家族の結婚式に立ち会えない

など。

「結婚してすぐ未亡人になった女性」という点は、以前見た映画「あなたの名前を呼べたなら」の主人公と共通しています。

mizukifukui.hatenablog.com

こういったテーマがよく描かれているというのは、それだけインド社会の課題として重いものなんだろうなと思います。

と言えども、この小説の日本語版は2001年に出版されており、先述の映画は2018年の作品。この約20年の間にも、状況はあまり変わっていないのかもしれません。

読んでいて、そもそも「未亡人」っていう言葉が嫌だな〜と思いました。文字通り読めば「未だ亡くなってない人」。「旦那が亡くなったくせにのうのうと生きながらえている」みたいな意味合いが込められてますよね…。「女性・妻は、男性・旦那の所有」という価値観のもとにある概念。

旦那を亡くした、という点でかわいそうなのは奥さんなのに、そんな奥さんをさらに追い詰めて辱める考え方でもあります。とても前時代的だなあと思います。

 

絶望的な悪習から、悪習をはねつける新しい希望へ。

コリーが最初に置かれる状況は、貧しさと、結婚に関する慣習が始まりになっています。

  • 娘のいる家:貧しさから、年頃の女の子は結婚させる(→家を出ていってもらう)
  • 息子のいる家:嫁が持参金を持ってくるので、お金目当てで結婚させる

結婚に際してお金のやり取りがあるのは、世界的にも普遍的にあることで、「保障のため」みたいな意味合いが強いのかなと思います。気軽にすることではない、という重みを持たせることにもつながってそう。

だけど貧しい状況にあると、結婚が「お金目当て」になってしまう。そうすると、望んでいない結婚になりがちで、寂しさや悲しさが先に来てしまうようなものになってしまう。
そんな、“貧しさの象徴”がサス(コリーの義母)の存在かもしれません。「お金のため結婚させたのに、ハリが亡くなったから養う負担が増えただけだ」というようなことを言うし、最終的にはコリーを置いていってしまうし。

「サス自身もいろんな酷い状況にぶち当たって来たからこうなってしまったんだろう」と物語の中でコリーも想像しますが、そうであっても、人をお金やモノのようにしか見られなくなるのは、人として悲しいことです。心まで貧しくなってしまうのは怖いこと。

そういう状況から、徐々に脱していく契機になるのが、ヴリンダーヴァンでの出会いです。車夫の青年ラージとの出会いや、彼が連れて行ってくれた「未亡人の家」との出会い。未亡人に関する悪習に囚われない価値観や人々との出会いによって、コリーの道は拓けていきます。

そしてもちろん、それは出会いだけでなく、コリーがチャンスを掴む力を持っていたからこそ。途中までなかなか絶望的な物語で、「こんな状況からどうなるんだろう…」と思わされるのに、最後はとても希望の持てる終わり方で、勇気付けられました。

 

日本から見ると、インドの社会のあり方は遠いものに思われるかもしれません。だけど、だからこそ、こうして読みやすい小説でその一端を感じてみると、ニュースで見ることなどが身近に想像できるようになったりします。

インドは今、女性に対する性暴力に反対するデモ等が盛んに起こっています。この作品で読んだような若年結婚も含め、悲しい思いをする女性が少しでも減るといいなと思います。

家なき鳥

家なき鳥

 

 

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