ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

濃密に作り込まれた2時間強。映画「パラサイト 半地下の家族」感想。(ネタバレなし&あり)

先日、映画「パラサイト 半地下の家族」を見てきました。私が事前に知っていたのは、

ということくらい。内容についてはほぼ何も知らずに見に行きました。結果、先が読めそうで読めない、感動以外の要素がほぼ詰め込まれたハラハラドキドキの展開を楽しむことができました。

これから見る人はぜひネタバレなしで見に行ってほしいですがポン・ジュノ監督もネタバレなしを望んでいるそう)、見た感想を書くにあたってはぜひネタバレしたいところです(もう見た人、見る気は全くない人に向けてという意味でも)。なので物語の展開・オチに関する点で、前半ネタバレなし、後半ネタバレありで感想を書いてみます。

 

あらすじ・登場人物


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編www.parasite-mv.jp

半地下の部屋に暮らすキム一家は、全員失業中で、内職でなんとか暮らしています。そんな中、長男ギウが同級生の友人から家庭教師をしないかと頼まれ、引き受けて向かった先は、高台にある豪邸。そこで夫人の信頼を勝ち取り、家庭教師の仕事を射止めたギウは、巧妙な工作で豪邸の使用人を追い出し、家族をその職に就かせていきます。

題名のパラサイト(Parasite)は「寄生虫・寄生植物・居候」などという意味で、韓国語の原題もずばり「寄生虫」です。その名の通り、半地下の家族が豪邸に“寄生”していく、というのが話の筋になっています。

登場人物は、大きく分けて「半地下のキム一家」と「豪邸のパク一家」に分かれます。ここでは主要な、キム一家を紹介しておきます。

  • ギテク(父):一家の大黒柱だが、失業中。無計画な性格。
  • チュンスク(母):ハンマー投げの元選手。
  • ギウ(息子):フリーター。兵役の前後に4度大学受験をするも失敗し続けている。
  • ギジョン(娘):フリーター。美術に優れる。

では、まず物語に関するネタバレなしの感想を何点か。物語の前提となるところや、筋には直接関係しないと思われる場面のネタバレはします。

 

ネタバレなしの感想

「何も信じられない、信じられる人が勧めてくれるものは間違いない」

印象に残った、夫人のこんな↑セリフがありました。

この物語は、豪邸の夫人が「信じられる人が勧めてくれるものは間違いない」という、ある意味純粋すぎる・付け入る隙のある人間性であることからスタートしています。

「何も信じられない」という言葉から、きっとこれまでも騙されたりしたのだろうと想像しますが、その結果至った思考でいとも簡単に騙されていく様子はとても皮肉でした。

ネット上でたくさんの情報が行き交う現代。マスコミや匿名の色んな情報よりも、信用できる人・アカウントの情報を信用しがちになってきている今を映しているような気がしました。

 

コメディ的面白要素もふんだんに。

ブラックコメディーならではの皮肉・残酷さのあるシーンも多々ありましたが、単純に笑える場面もあって、楽しかったです。

例えば、ギテクが豪邸の一家を騙すため、半地下の家でギウが用意したセリフを練習する場面。一生懸命演技するギテクに、ギウが「盛り上がりすぎ」などとアドバイスしたりするのは喜劇そのものでした。喜劇において、俳優が作品の中でも演技している役を演じている、という「演技の演技」が個人的に好きなので、お気に入りの場面です。

▼おまけ:大好きな韓国映画「LUCK-KEY」がその権化です。超おすすめ。今でも予告編を見て毎回笑ってしまいますw

LUCK-KEY/ラッキー(字幕版)

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  • 発売日: 2017/10/04
  • メディア: Prime Video
 

また、ある場面では北朝鮮の国営放送のキャスターのマネがあったり、「北のミサイルのボタンみたい」というようなセリフがあったりと、「韓国でそんなこと言っていいんだ?!w」と思えて、驚きつつも面白かったです。

私が小学生の頃、ニュースでよく流れた北朝鮮軍兵士の行進の歩き方を真似するのが流行ったことがあり、それを思い出しました。笑

 

音楽やカメラワークなど、こだわりを感じた。

オーケストラ演奏の音楽が仰々しく盛り上げる場面が結構あるのが、印象的でした。カメラワークなどもこだわりがありそうだし、スローモーションを多用している印象を受けました。

この映画で出てくる場所は、道以外は一から作ったセットだそうで、その点でも「画面の美しさ」を感じることが多かったです。

セリフの言い回しも、自然さよりも完璧さ・劇っぽさが求められているような感じがありました。

この「作り込み具合」は少し好みが分かれるかなと思います。私はあまり好みではありませんでした。

 

〜〜これ以降は、物語の展開やオチに関するところをネタバレします〜〜



ネタバレありの感想

先が読めそうで読めない。典型的脚本とどんでん返しの組み合わせ

物語としては、昔からありそうな典型的な脚本パーツの組み合わせとも言えて、「先が読める」感覚にもなります。2時間オーバーの長尺も相まって、若干飽きる感覚にもなりました。

だけど、それに追加して「ここまでは予想できない」というような場面がやってくるので、最後まで「どうなるんだろう」「どうやって終わるんだろう」とハラハラさせられました。例えば、

  • ギウから、一人ずつ家族が豪邸に潜入していく
  • キャンプに出かけたパク一家。それを利用して豪邸を思いのままに楽しむキム一家。だけど、大雨の中パク一家が帰宅しそう…
    →その前にまさかの出会い
  • 突然帰宅したパク一家。キム一家はバレるのか?バレないのか?
    →なんとか脱出したけど、半地下の部屋はまさかの水没

というところ。

 

「半地下の家族」が出会ったのは…

途中までは「半地下一家と豪邸一家の物語」として進んでいきますが、上記で「まさかの出会い」と書いたように、第三者が現れるわけです。

それが、豪邸の地下シェルターで暮らす、追い出された元家政婦の旦那。これがわかるシーンは、本当に文字通り息を飲みました。「半地下の家族、地下の夫婦に出会う」と言ったところでしょうか。「半地下の家族」が“寄生”していることを知った「地下の夫婦」の登場から、物語が一気に予想できない方向へ展開していきます。

 

抗えない、簡単には拭えないものの表現

豪邸に住むパク一家と比べ、貧しい「半地下の家族」が抗えないもの・簡単には拭えないもの(アイデンティティとも言えるかもしれません)を表現しているものがいくつかあり、とても興味深かったです。

①臭い

豪邸の息子に、実は一家である家庭教師や使用人たちが「同じ臭いがする」と言われたり、主人が運転手ギテクの臭いを「耐え難い」と裏で言っているのを知ってしまったり。画面から直接伝わってくるものではありませんが、他の点は完璧に騙せていても臭いは簡単には拭えない、「ついて回ってくる貧しさ」の表現と思えました。

そして終盤、豪邸のパーティーで血みどろの事件になっていく場面では、地下暮らしの旦那を豪邸の主人が明らかに臭がったのを見て、ギテクは主人を刺してしまいます。臭いに宿る「貧しいけれどしたたかに頑張って生きているプライド」が傷つけられたということかなと。

②水・階段などで表現された「物理的高さ」

「高台の豪邸」と「半地下の部屋」が対比的で、かつ物理的な高さが地位の高さも表していました。

大雨の夜、半地下の部屋はほとんどが水没してしまうのに、高台にある豪邸は何の影響もなく爽やかに翌朝を迎える場面は特に対照的でした。雨の中、坂や階段を下って帰っていくキム一家と、その足元を流れ落ちていく水。水が高いところから低いところへ流れるのは当然のこと。それが、抗えない“身分の違い”を示しているようでした。

というこんな見方は、見た後インタビュー記事で見聞きしたものなのですが。見ているときは、正直、「韓国の街って坂多いよなあ」としか思っていなかったです。私の地元・横浜も、去年の夏に行った韓国のソウルも釜山も、坂が多かったり急だったりするので自然に見れてしまっていました。www.tbsradio.jp

 

手放せないようで、手放せるもの

一方、ギウが同級生からもらって大切にしていた、不思議な「石」。こちらは、先ほど書いた「抗えないもの」の逆を描いているように見えました。

石が出てくる場面はどれも不思議で印象的でした。

  1. 最初に石をもらった時と“寄生”が始まったのは同じタイミング
  2. 家が冠水する中、石を持ち出した
  3. その石でぶたれて重傷を負う
  4. 石を手放す→のちに大金持ちになって豪邸へ

こんな表現から、石と“寄生する生き方”はセットで描かれていたのではないかと思います。「貧しさや“寄生”は、実は自分から背負っていた生き方だった」というような表現なのかなと思いました。

妹ギジョンを失い、父ギテクを地下に取り残してしまったという大きな犠牲の上ではあったけれど、「変わろう」とギウが決心して石も生き方も手放した結果が、自分のお金で豪邸へたどり着く結果に繋がったのではないでしょうか。

 

なんとなく想像していた作風とは違いましたが、本当に濃密な作品でした。そして、色んな解釈が楽しめる作品でもあると思います。少し冗長に感じて飽きかけた時もあったので絶賛というほどではありませんが、十分おすすめです。機会があればぜひ。

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