ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

まさに銭湯のように、じんわり沁みる映画。「私は光をにぎっている」で感じた喪失感と希望。

松本穂香主演の映画「私は光をにぎっている」を見てきました。私が好きな、銭湯を舞台にしており、「翔べない時代の魔女の宅急便」と監督が紹介しているということでストーリーが気になって見に行きましたが、じんわりと良い余韻が残る作品でした。

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あらすじ

澪(みお)は、内気で話すのが苦手な20歳。自分を育ててくれた祖母が入院することになったのを機に、上京することに。父の古い友人で、銭湯を営む京介の元へ居候することになる。銭湯を手伝いながら、下町で人と出会い、少しずつ成長していく物語。

大きな展開は起きませんが、人々の営みや生き様に現れる人間味が魅力でした。

 

人間味ある下町感がたまらない

私は銭湯や商店街などが好きです。この30年ほどで開発された住宅街で育ったからか、ご近所づきあいや下町の感じに憧れがあります。

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個人経営の店とかって、それぞれ雰囲気もあるし、応援したい気持ちがあります。

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この映画の舞台になっている東京の下町は、とても味があって素敵でした。店の人といろんなことを話したり、余り物をもらったり。時にはツケ払いにしたり…(これはあんまりよくないかもしれないけどw)

お金と商品のやりとり以上のものが起こってる。お互いをちゃんと人として見ている感じが好きなんです。こういうところが身近にもっとあったらなあと思う。

逆に、最初澪が働いたスーパーが対比的に描かれていたと思います。スーパーでは、客にクレームを言われたり、バイトの先輩である女子高生や店長に無下な態度を取られたりする澪。少しでも得をしよう、良い思いをしようとする客と、いろんなことに疲弊して諦めた雰囲気で働く人たち。

どちらも「お金のため」という思いや、「搾り取ろうとしてる感じ」を覚えて嫌でした。でも実際こういうことってめっちゃあるんだろうなと思います。

個人で頑張る店が地元にあっても見過ごしてたり、なんだかんだ安さや利便性を求めてチェーン店に行ったりしてしまってる自分もいるけど、やっぱりできるだけ血の通ったお金の使い方をしたいなと、改めて思いました。

 

失われていくことの悲しさと、希望。

下町の様子は素敵でしたが、そんな場所が再開発で失われていく様子が描かれていたことで、今そうして失われつつあるということ、守ろうとしないと、いや、守ろうとしても無くなってしまうということを実感しました。

「なんでこんなに素敵なものがなくなっちゃうんだろう」と、悲しさと、その素敵さの狭間で涙が出たシーンもありました。

昔ながらの日本家屋だった、私の母の実家を思い出しました。玄関の高い段差や丸窓が好きだったけれど、祖父が亡くなってから、今はもうない。当時高校生なりに、守れなかった、と思った。あの時の悲しさ、無力感と喪失感も、思い出しました。

チェーン店や大型の店舗が増えていて、町にある店がどこでも画一的になっていっています。その裏で、個人の店が元気にやっている地域は減ってきています。

でも、そうして画一的になっていく時代だからこそ、店や町に宿る文化や、経てきた時間こそ、これからは特に大切にしていくべきものだと思っています。そこでこそ独自性や違いが浮かび上がる。アイデンティティになる。

最近、「古いものの価値」をよく感じます。この時代、新しいものはたくさんあるけれど、古いものこそ減ってきている。だからこそ、何が正しいかわからない時代に、古いものが醸し出す安心感が求められているんだと思います

ただ古いだけでは時代に合わなくなってしまうかもしれませんが、映画の最後では、澪がうまく古いものと自分のやりたいことを掛け合わせていて、「こうすれば続いていけるよね」というメッセージを感じて、希望を持てました。

 

言葉へのこだわり

内気で話が苦手な澪を主人公に据えているからこそ、セリフをはじめ映画で出てくる言葉にはこだわりを感じました。普段は言葉が少ないのに、肝心な時は思わずバシッと言うこともある澪。

印象に残った言葉をいくつか挙げてみると、(記憶頼りなのでニュアンスですが)

  • 京介「やれることをやるのが仕事」
  • 美琴「澪ちゃんは話せないんじゃない、話さないんだよ。話さないことで自分を守ってる」
  • 京介「覚悟ってのは、人を巻き込むと決めること」

そして映画の随所で出てくる、詩のフレーズが効いていました。映画の題にもなっている言葉たち。

 

まとめ:人や町が愛おしくなる、じんわり系映画。

ハラハラドキドキな展開はないけれど、人や町が愛おしくなるような作品でした。大切にしたいことを思い出させてくれました。じんわりしたい気分の時にはおすすめな映画です。

phantom-film.com

 

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