ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

IRとかカジノとかわからんから、“「横浜の未来」シンポジウム”に行ってみた。【レポート①】

今年8月に、横浜市の林市長が突然表明した「IR(統合型リゾート)誘致構想」。大規模なホテルや会議場、カジノなどを備えたリゾートを、横浜の山下埠頭に誘致しようという構想です。

これに関して、カジノへの反発や住民の意思を問わずに進む構想への反発が一部市民からは上がっています。

私は国の法整備の時点でも、横浜の誘致構想が発表された時点でも、「なんかよくわからん」という感じで、賛成でも反対でもありませんでした。

でも最近になって、新聞などで記事を読んだり、街頭やポスターで反対運動(or住民投票を求める動き)を見かけたりして、「市民として何も知らない・考えてないのはまずいかも」「詳しく知った上で考えたいなあ」と思うように。

そんなタイミングで知ったシンポジウム。興味を持って行ってみたら、久々にマクロ的視点で物事を考えたり、新しい考えを知れて良い時間になりました。当日の内容や感想を書いてみます。

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主催の「横浜の未来コンソーシアム」とは

今回のシンポジウムを主催したのは、「横浜の未来コンソーシアム」。当日の資料によると、

「横浜の未来コンソーシアム」は、横浜市のIR誘致構想発表を機に議論の場を開くとともに、都市・横浜の未来に対する提案を行うことを目的として集まった建築・都市の専門家であり、大学で教鞭を執る有志によって構成されています。

とのこと。発足したばかりだし、誰に向けてもオープンなようなので、これからの動きに期待したいです。

 

当日の雰囲気・内容

会場は横浜開港記念会館の講堂。

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横浜三塔」の“ジャック”としても知られる、歴史と風格を感じる建物です。個人的に、横浜で一番好きな建築物。

ちなみに、先日からIR構想についての区ごとの説明会が始まっていますが、予定地・山下埠頭のある中区の説明会もここで行われていて、なかなか紛糾したようです。

hamarepo.com

こういった記事を読んで、シンポジウムの方はどんな雰囲気になるだろうとちょっと心配でした。しかし、参加費が必要だったり、「IR・カジノ反対」というような文脈ではなく横浜の未来やまちづくりを考える、という雰囲気だったので、全く落ち着いていて安心しました。

でも会場は8割ほど埋まっていたし、質疑応答で発言する方の言葉を聞いていると、まちづくりや横浜の行く末について強い関心や意思を感じました。

ちなみに、事前の報道はこんな感じでした。▶︎横浜の港の新しい姿を探る 「横浜の未来コンソーシアム」がシンポジウム - ヨコハマ経済新聞


では、当日の流れと内容をかいつまみつつ、それぞれに対する感想を書いてみます。

 

「ヨコハマ都市デザイン」報告(北山恒氏):横浜の都市デザインの経緯

横浜の都市としての歴史が始まる横浜港開港(1858年)以来、「都市計画において幾度かの“断絶”があった」という話は、「言われてみれば確かに」という感じでした。

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ここで紹介されている通り、関東大震災・横浜大空襲・米軍接収が、それぞれ当時の計画を阻む“断絶”になっていたわけです。

そして後の座談会の前にさらっと重要な説明があったのですが、この断絶の後、

米軍接収により中心部を奪われた→横浜駅西口を開発→接収地が戻ってきた(1960)=新旧2つの中心部に距離がある→2つを繋げる「みなとみらい」開発

という経緯があり、「戦後、本土で最も復興が遅れた都市」という状況から、今なんとか形になってきたとのこと。米軍接収については、市内の博物館等でなんとなく見た覚えがありましたが、前後の経緯を聞いて初めてちゃんと理解できた気がします。

横浜市のHPにもこんなページがありました▶︎接収の歴史 横浜市

みなとみらい地区は、60年代の返還により乱開発が進んで行きそうになる町を構造化するため、そして市民が海にアクセスできるようにするため、三菱造船所(今ランドマークタワー等がある場所にあった)に移転してもらって開発が進んだとのこと。

以来何度か都市計画が作られつつも、今最新なのは2009年のものだそう。「理念のない都市は、短期的な利益の最大化を求める資本のゲーム盤になる」という指摘もあり、そのせいでタワーマンションがかなり増えたり、町が違っても同じような景観になっていっている状況に警鐘を鳴らす言葉も聞かれました。

 

金子勝氏プレゼン:いま日本の経済・産業が置かれている状況と、IR構想の危うさ

経済や産業の視点で、「日本はもはや先進国ではない」という話がありました。結構いろんなところで言われていることでもあり、私もそう思っています。

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横浜はもちろん、日本が置かれている状況はかなり厳しい中で“ぶち上げられた”IR構想。根拠が全く示されなかったのですが「カジノも世界では失敗している」とのことで、かなり懐疑的というか反対のようでした。

感想としては、言われている内容自体にはまあ同意するし政権批判なども全然してくれて良いのですが、本人も断りを入れている通り、言葉が荒くて感情的で、結構不快でした…。笑 「反対派」の人にはウケるだろうけど、伝わるものも伝わらなくなってしまうので、未来志向の場でああいう言葉は使って欲しくないなと思いました。その場限りで有効な言葉だと思うので書きませんけど。

 

木村草太氏プレゼン:IR整備法は横浜に何を問うのか?

AbemaTVに出演したりしているのを知っている方だったので、おお、と思いつつも、始まる前は「憲法学者がなぜここに?」と思っていました。どうやら、登壇している教授(確か。誰だかは忘れました)と知り合いで、「学者だから法の相談を受けてもお金は取れないと言ったら、その後何かと相談されるようになった」とのことで、ひと笑い取っておりました。あと横浜・洋光台育ちだそうです。

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プレゼンでは、法における賭博の定義や判例での扱い、IR整備法やカジノ規制についての紹介があり、IR整備法への疑問が呈されました。その疑問というのは、

  • なぜ認定されるのは“3”計画なのか?その自治体が特権的扱いになるのはどう説明するのか
  • 住民の意思を問わないのか?:普段の政治的意思決定は政治家・官僚に任せていても、大規模開発などの場合、彼らの利益(地元ゼネコンの利益など)と住民の利益が乖離しがちなので、住民投票が有効になる
  • IRが要求する施設(会議場、展示場、ホテル、美術館、ショッピング施設…)横浜・みなとみらいにもうある。→IRを誘致するということは、みなとみらいをもう一つ作るのか?みなとみらいの意義・役割は何なのか?が問われている。 

どの問いもとても明確でわかりやすかったですが、特に最後の問題提起は小気味良く、「全部あるじゃん」という一言で一蹴されていて、「ほんとだww」と膝を打つ感覚でした。

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ちなみに、プレゼンの中では「カジノ以外はある」と言われていましたが、後の座談会で「桜木町から少し行くとJRAもあるので、公営賭博場もあります」と言われていました。

 

山本理顕氏プレゼン:横浜市営住宅を始めとする現状の住宅のあり方、観光地と住宅地の両立

横浜の市営住宅は需要に対してとても数が少なく、かつ今あるものは交通の便が悪かったり建て替えが必要な時期に差し掛かっているということです。

そして、昔は家で小商いをしていることが多く、住宅と商業・生産の場が一体となっていたけれど、今は多くの住宅が「消費のみの場」になってしまっており、それが産業や町の衰退の原因になってしまっていると指摘がありました。

また、ベネチアアムステルダムなどを例に出し、観光客から見ても魅力的な町は、そこに住んでいる人がいて、住民たちが自治的に住みやすい町・楽しい町を作っていった結果できている、という話がありました。なので、「観光客を呼び込む=IR誘致」という論を進める横浜市の構想に対し、今は中心部に対しての周縁・住宅街である場所からも、新しい産業や観光地が生まれうるし、作っていこう、というような話でした。

東京に対してのベッドタウンという立ち位置にもなりがちな横浜市。人口も多いし、住んでいる地域のまちづくりに関心を持っている人は人口比で言ったらかなり少ない気がします。だけど一方で、「横浜」に愛着がある人も多いと感じています(自分もそうです)。だからきっかけや仲間の存在があれば、市内の町がより自治的で個性的になっていける可能性もあると、話を聞いてより思いました。

ただ、例に出されたベネチアアムステルダムは、今まさに観光客の来すぎで「観光公害」も起きているので、例としてはどうかとも思いました。また、ベッドタウン的な町(私の地元もそうです)の住民が地元にいろんな客が来るのを良いと思わないことも大いにありうるし、魅力的な場を作るのには時間もかかります。

一方、「職住近接」という考え方に超共感している私としては(通勤通学の時間や満員電車が本当に嫌)、地元で小商いをやることにも興味があるし、地元がもっと個性ある場になってほしいと思っています。総合的には共感できる話でした。 

 

今回は一旦このくらいで。また後日、座談会等の内容や、シンポジウム全体の感想や考えたことを書きたいと思います。

 

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