ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

映画「国家が破産する日」予習編〜時代背景を調べてみた〜

先日、1997年の韓国で起きた通貨危機をモチーフにした「国家が破産する日」という映画を見てきました。

とても社会的なテーマで、「こんなテーマで映画ができるとは…」と感心した一方、事前情報なしで見るにはかなり難しいテーマ。金融に関する用語が多く使われ、それを字幕で追わなければいけないので、特に最初はついていけませんでした。日本語で聞いても難しいくらいなのに…。

時代背景も含め「予習が必要だったな」と痛感したので、色々調べてみました。どちらかというと苦手な話題なので不足もあると思いますが、ちょっとした勉強・参考程度にはなるかと思います。あらすじと合わせて紹介します。

 

あらすじ・登場人物

1997年11月の韓国。好調な経済やOECD加盟という「先進国の仲間入り」に沸く裏で、現金でなく手形に依存した取引が増え、庶民の賃金未払いなどが起きつつありました。そんな中、外国の投資家が資金を回収する動きが急速に広まり、外貨不足やウォンの暴落が起きていきます。当時「国難」とも言われたこの状況を、主人公たちがどう振る舞い生き延びるのか、複数の軸で描くドラマです。

そんな物語の、主な登場人物は以下の4人。

  • ハン・シヒョン:韓国の中央銀行、韓国銀行の通貨政策チームを率いる。国民への影響を最小限にするため、危機を国民に開示しようと奮闘する。
  • パク・デヨン:財務局次官。国民の不利益を顧みず自らの利益を考え、危機隠蔽の主導やリークをする。シヒョンと何かと対立する。
  • ガプス:食器を作る町工場を営む。通貨危機に翻弄される。
  • ユン・ジョンハク:総合金融会社に勤めていたが、危機を予測し、好景気の最中に辞職。危機を逆手に事業を始める。

 

では、こんな映画をみるのに助けになりそうな時代背景や用語を、何点か紹介します。

 

時代背景・用語を調べてみた

日本でも銀行等の破綻があった、1997年11月。

映画で描かれる韓国の通貨危機は、東南アジア諸国で起きた通貨危機のあおりをうけて始まったそうですが、日本でも同時期に大きな金融の動きがありました。それは

の2つ。94年生まれで当時のことは記憶にない私でも、テレビなどで見聞きしたことがある出来事です。アジア全体が金融面をはじめ大きな変化を迫られた年だったのでしょう。

 

国際通貨基金IMF)とは?

97年11月に、韓国政府は国際通貨基金IMF)に緊急支援を要請します。

国際通貨基金International Monetary Fund)は、国連の専門機関の1つ。第二次世界大戦後に国際通貨制度(為替相場制度、多国間決済制度など)を安定させるため、1945年に発足しました。現在の主な役割は、新興国・途上国への支援や金融危機への対処だそう。

www.imf.org

2012年の朝日新聞では、97年当時のIMFを以下のように手厳しく描写しています。映画でもほぼ同じ捉え方で描かれていたと思います。

国際通貨基金IMF)は第2次世界大戦後に生まれ、本部はワシントン。各国の財務状況を点検し、国家の対外支払いが危うくなると動き出す。いわば「世界のマネー保安官」。資本主義体制を金融面から支える国際機関として一目置かれてきた。

保安官は頼りにされるが、やり方が手荒なだけに敬遠される。典型が「占領軍」と揶揄された1997年12月の韓国。IMF官僚がソウル市内を一望するハイアットホテルに陣取り、政府の責任者を呼びつけては指令を発した。協議とは名ばかり。受け入れなければ、命綱である融資を打ち切る。

朝日新聞 2012.1.19朝刊「(行きづまる国々 世界債務危機:5)韓国 格差にすくむ「優等生」」

 

「総合金融会社」の存在

日本では「ノンバンク」と称されるもののに近い、「総合金融会社(総金社)」が過剰融資をしてしまい、不良債権を抱えたことが、通貨危機の一因だったという新聞記事もありました。

総金社は大小合わせて二十社程度ある。企業向けに短期資金を貸し出し、韓国経済の中で大きな役割を果たしてきた。銀行保証があれば無担保で貸し出すため、企業にとっては市中銀行の「貸し渋り」を心配する必要もないが、結果的に過剰融資につながった。

(1997.11.23 朝日新聞朝刊)

そして、うろ覚えですが、映画の中でユン・ジョンハクが勤めていたのもこの総合金融会社だと思います(簡単に融資を決める場面や、危機後に大混乱している場面があったので)

 

通貨危機が社会構造を変えた

通貨危機、そしてIMFの融資と引き換えに、できるだけ早く回復を実現するため韓国は様々な構造改革を受け入れました。まあ、先ほどの記事の引用でもあったように、強権的ではあったようですが…。

そのお陰か、2年ほどでIMFの融資金を返済するほど早々に復活を遂げたようです。しかしその裏で、非正規雇用者の増加や格差拡大など、今の社会に残る負の影響もあります。

いまも「IMF危機」は、格差拡大という形で韓国社会に影を落とす。(中略)
通貨危機後、いくつかの財閥は解体されたが、経済の素早い回復のため大企業の競争力をより重視する政策に転換した。いまも経済を引っ張る財閥系の大企業と中小企業の格差は埋まらない。大企業は韓国企業全体の売り上げの6割以上を占めるが、従業員数は中小企業の約1400万人に対し、約190万人。賃金の差は2倍以上に広がる。

(2017.7.30朝刊「(アジア通貨危機から20年:3) 韓国「IMF危機」 格差生んだ、過剰な処方箋」)

 

当時の生活への影響

韓国では当時大企業の倒産などが相次いだわけですが、直接大企業と関係していなくても生活にも影響がそれなりにあったようです。

1997.12.15付けの雑誌アエラの記事には「官民こぞって「倹約」ムード 韓国の金融危機というものがあり、そこで紹介されていたのは

  • アメリカに留学している子どもへの仕送りが厳しくなり、帰国を頼む
  • スポーツチームの海外遠征を中止
  • 輸入品であるコーヒーを控え、韓国のお茶を飲む
  • 手元の外貨を銀行に持ち込み、外貨不足の足しにしようとする「外貨預金運動」

などなど。

国家的危機――。そんな言葉が連日の報道の中で、繰り返し流されている。有力紙「中央日報」は国際通貨基金IMF)への支援要請について、日韓併合朝鮮戦争に続く二十世紀で三回目の「恥」とまで書いた。

また、2017年の朝日新聞の記事では、当時危機のあおりを受けて、銀行の合併による解雇や離婚を経験した人を取材しており、「思い出として語るにはあまりにも生々しい」という言葉もありました。(2017.7.30朝刊「(アジア通貨危機から20年:3) 韓国「IMF危機」 格差生んだ、過剰な処方箋」)

映画のHPでも、脚本家がインタビューでIMF経済危機は全国民の傷」などと語っており、一人ひとりにとって色んなことがあった出来事なのだなと思います。

kokka-hasan.com

 

本当は感想を書こうと思って調べたことだったのですが、報道のアーカイブでいろんな記事が出てきて面白かったので、まとめてみました。

難しくてとっつきにくいテーマでも、映画を介してみると、その背景にいた人々や生活に想像が及ぶようになります。今回の映画も、今までわからなくて避けてきたことを少し知るきっかけになったように思います。

また後日、映画の感想のほうも書いてみます。