140年前のハラハラドキドキの旅路をともに駆ける!「八十日間世界一周」感想。
ある日ブックオフでめぼしい本を探していたら見つけた、「八十日間世界一周」。1873年にフランスの作家ジュール・ヴェルヌが書いたフィクションです。
なんとなく題名を見たことはありましたが、未読だった本。後日図書館で借りて読んでみました。
図書館で受け取ってみたら結構分厚くて、「読み切れるかな〜」と心配になりましたが、杞憂でした。全く予想できないハラハラドキドキの展開で、2日弱で読了。いや〜、面白かった。感想をまとめてみます。
- あらすじ:当時じゃ信じられない速さの「80日間で世界一周できる」と証明するための旅。
- 紀行文を予想してたけど違ったw ハラハラドキドキの展開。
- 電車の乗り継ぎが身近な人には、特におすすめ?!
- 翻訳だけどとても読みやすかった。章の名前もうまい。
あらすじ:当時じゃ信じられない速さの「80日間で世界一周できる」と証明するための旅。
1872年のロンドン。時間に厳しく寡黙で、謎の多い資産家フィリアス・フォッグは、トランプ仲間の間で話題に上がった「今や80日間で世界一周できる」という新聞記事の真偽を巡って言い合いに。「実現できる」と断言するフォッグ氏は、資産の半分の額を賭けて「ぴったり80日後から少しでも遅れたら負け」という取引をし、すぐさま召使パスパルトゥーとともに旅立つ。
一方、同時期に、銀行から大金が盗まれる事件が発生。目撃された人物の人相書きはフォッグ氏そっくりで、刑事フィックスはなんとか彼を逮捕しようと、本国から逮捕状が届くのを待ちながらフォッグ氏の足取りを追いかける。
紀行文を予想してたけど違ったw ハラハラドキドキの展開。
題名から、当時の優雅な紀行文・旅行記みたいなものを想像していましたが、全然違いました(笑)
フォッグ氏は本当に80日間で世界一周できるのか?フォッグ氏はただ賭けのために旅立ったのか、それとも銀行強盗だったのか?など、いろんな点でハラハラドキドキの作品。
昔に書かれた作品って、どこか冗長だったりすることも多いですが、こちらは全く飽きさせない展開で、古さを全く感じませんでした。
物語で当時の世界の雰囲気はわかりますが、それを描くことがメインなのではなく、物語の舞台・要素として現れているという印象でした。1860年に発刊された雑誌「世界一周」をかなり参考にしているらしく、作者が直接見たものではないにしても当時の文物が作品の中で垣間見えて面白い、という一面もありました。
電車の乗り継ぎが身近な人には、特におすすめ?!
なんでこんなにハラハラする感覚が手に取るようにわかって共感できるんだろう、と思ったら、
- 普段から電車を使う。乗り換えもよくする。
- 旅行先でいろんな交通機関の乗り継ぎをしている(18切符で、在来線をひたすら乗り継いで横浜→広島を1日で横断したこともあります)
という経験から、その乗り継ぎの時の感覚が、物語の中で主人の周囲の召使たちが焦る感覚とほぼ同じだからだろう、と思い当たりました。
「乗り遅れる!!」みたいな感覚は、高校のとき(路線バスで通学)から身近だし、旅先でも予定の電車に乗り遅れそうになったことなども多々…。
旅先、特に外国だと、とにかく勝手がわからない。予定のものを逃してしまったら「どうなっちゃうんだろう」「どうしていいかわからない」という不安も乗ってくるので、なおさらヒヤヒヤするんですよね。これはきっと、もっと旅行などが縁遠いものだった昔ほどそう。だからより一層、その焦りや不安を感じ取って共感してしまうのでしょう。
また、「時間通りに動く」「時間に間に合う」ことが重視されている日本の文化と、時間の限られた中で世界を駆け抜けていく主人公たちの様子はとても近いものがあると思いました。
翻訳だけどとても読みやすかった。章の名前もうまい。
有名な本なので、出版元や翻訳者が違うものも数多く出ています。なのでこの版が、ということなのか、原語の作品自体が、なのかはわかりませんが、翻訳なのにとても読みやすくて驚きました。140年前の作品とも思えない。
「読みやすさ」という点では、章の長さもちょうどよかったし、そのタイトルも秀逸でした。なんか今のブログ記事や芸能ネット記事のタイトルみたいだなwと思いました。例えば
- パスパルトゥー、幸いにも片方の靴を無くしただけで事なきを得る(10章)
- フィリアス・フォッグ、とてつもなく高価な乗り物を買う(11章)
など。「どうしてそうなった?!」「何があった?!」と気になる題ばかりで、題が目に入ると続きが気になって読んでしまう、というのの繰り返しでした。
久々に、こんなにハラハラドキドキさせられる作品と出会えました。「ハラハラドキドキ」という言葉がこんなに似合う作品って他にあるだろうか、ってくらい。旅をすることが難しい今、日々に刺激をお求めの方におすすめです。