ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

こんな人生もあるのか…。ドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」で知った、議員とその家族の人生。【ネタバレ感想】

先日、ツイッターなどで話題を見て気になっていたドキュメンタリー映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」を見てきました。

予想外に泣けてしまう場面もあり、政治・国政に関わることの難しさなども考えさせられ、見応えのある映画でした。これはおすすめ。

あらすじや感想をまとめてみます。

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あらすじ


映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』予告編

香川県高松市出身の衆議院議員小川淳也氏。総務省に勤めていたが2003年に辞職し、民主党から香川1区で初出馬。2005年に比例代表で当選し、現在5期目。そんな彼に、初出馬の時からカメラを向けてきた監督の作品。

小川氏はまっすぐな想いで国を良くしようとするが、党内の出世や権力争いに関心がなく、比例復活当選のため発言力を得られない。選挙区では、両親や妻子たちも選挙のたびに必死でサポートするが、地元メディアのオーナー一家の自民党議員をどうしても破れない。民主党民進党希望の党→無所属と、野党の再編の荒波の中でもがく。

 

では以下から、見て思ったことを何点かあげます。ネタバレありです。

 

「比例復活」の闇と光

見ている最中からとても感じたのは、「この人は、比例復活しちゃうからやめられないんだな」ということでした。

両親や監督たちは小川氏について、「この人は政治家には向いてないんじゃないか」と思うようになっていて、それは映像を通して観客も感じます。私も「国政にこだわらなくても、首長とかやればやりたいことやれそう」と思ったり、「大学教授・ソーシャルビジネス・NPOとかも良さそう」と思ったりしました。

だけど、そういう別の道を選ばないのは、苦しい選択や比例復活の末に当選を続けているから。比例復活もなく落選していたら、彼のバイタリティがあれば潔く別の道を選ぶんじゃないかと思えました。

そしてそんな、ある意味「小川氏の可能性の足かせ」にも見える比例復活を果たしても、党内での発言力は弱いそう。「比例復活って闇深いな…」と心底思いました。

しかし良く考えてみれば、現状の選挙区では地盤の強い議員が当選しているわけで、比例代表制がなくなって投票先が選挙区だけになれば、新人やコネなどがない議員は当選しにくくなります。多様な議員を国会に送り出すための制度が比例代表とも言えるのだなと、改めて考えが至りました。

 

出世・権力にかかわらず、正当な評価を。

党内での出世や権力を握ることに、関心も能力もないらしい小川氏。おかげで、政界の外から期待はされつつも全然発言力は増さないし、民進党時代に役職を得てようやく出世したように見えたけれど、一年と経たず党が瓦解して振り回されます。

党に振り回される彼の姿を見て、前からちょっと思ってはいたけれど「投票する時は、所属している党よりも候補者個人を見て投票したいな」と思いました。

でも、議員個人を評価するための材料は少ないし、それを集めようとしないとなかなか目に入ってこない現状もあります。そんな状況で目立つのが、党内外の役職や、それに伴うメディアでの露出。だから出世や権力掌握が必要になってしまうのでしょう。

しかし、注目を浴びる“まともな方法”も映画の終盤で知りました。2019年、ある委員会での小川氏の質疑の鋭さがツイッターを始め話題になったそう。これは正当な注目のされ方だと思いました。

政治家は、成果が見えにくいし、特に野党は政策の実行というよりも追及や批判しかできません。なので、ちゃんと国会・委員会などでの質問や政策に与えた成果で、党内でも国民にも評価される状況が望まれると思いました。

そのためには、議員本人の情報発信も必要だし、メディアも私たちも国会中継などを注視できると良いなと思います。

 

家族、特に同世代の娘たちの存在

この作品の大きな構成要素の一つが、小川氏を支える家族たち。最初は出馬に猛反対したそうですが、献身的に支え続ける姿に驚きました。

特に私の印象に残ったのは、初出馬の際には小さかった二人の娘たちの存在。私より数歳下の同世代で、選挙権がある年齢になってからは、父の選挙を手伝っています。

本人たちは「やらざるを得ない」と言っていますが、こんなの嫌だ!と反発しても全くおかしくないのに、「娘です。」という襷までかけてビラを配ったり、のぼりを持って父の後を歩いたりする二人の姿は健気すぎました。小川氏のピュアさをそのまま受け継いでいるのかも…。

同世代だから尚更、こんな人生があるとは想像もしたことがなくて、ある意味カルチャーショックでした。まあ、自営業のように「家業」みたいな感覚なのかな、と想像します。

そしてそんな二人もいる前で、選挙活動中に通行人のおじさんに「(小川氏は)安保法制に反対だったじゃないか(なのに希望の党に入った)」「顔は良くても中は真っ黒だ」などとなじられる小川氏。この場面は、今思い出しても辛くなるほど、引き裂かれるような気持ちになりました。親子どちらにとっても、互いがいる前でこんなこと言われるのは辛すぎます。

選挙区では落選して、支援者に謝ったり頭を下げたりする小川氏を、すぐそばで見ている娘たち。父のそんな姿を見て、一体どんな気持ちになるのだろう…と気が遠くなるような感覚にもなりました。でも、働く親の大変さや、色んな人と協力したり味方・仲間を増やすことは学べるかもしれないから、悪いことばかりじゃない…かも…とも思いました。

普通に「議員の息子・娘」と聞いたら、「育ちが良さそう」「良い暮らしをしてそう」「2世議員を目指すのか?」とか思いがちですが、コネもなく選挙区でなかなか当選できない小川氏は毎回泥臭く必死に選挙活動をするし、普通のアパートに住んでいます。娘たちも「政治家はもちろん、政治家の妻にもなりたくない」と言っていて、「こういう“議員の子ども”もいるんだな」と知りました。

また、「若い人も政治を志す世の中になってほしいけれど、それが自分の子どもとなると複雑」と話す小川氏の両親たちも印象的でした。親世代だと、このご両親にもとても共感しそうです。

 

まとめ:想像もしたことがなかった人生に出会えた。

一人の政治家から見えてくる、政治のあり方や、家族のあり方。いろんな点で得るものが多くて、本当に見れてよかったと思えた映画でした。

主人公である議員本人についてはもちろん、議員の家族(特に娘たち)について知って「こんな人生もあるのか、、」と、想像もしたことがない人生に出会って圧倒されました。これってまさに、ドキュメンタリーの醍醐味。

また、政治の世界は遠く感じがちなので、もっとエンタメでもドキュメンタリーでも政治を扱う作品が増えても良いんじゃないかと思うし、そういう作品をこれからも色々注視したいと思いました。

 

おまけ

YouTubeで、監督を交えたなかなか興味深い対談がありました。参考までに貼っておきます。

youtu.be