ピースボートで1000人に読まれる新聞記事を書いていた話。
船旅は、基本的にインターネットがない生活になる。乗船者同士の連絡手段も、普段ならメールやLINEがあるだろうけど、船では使えない。部屋の番号を知らせ合って、部屋に電話するか、部屋を訪ねるかだ。
そんなアナログな船旅の運営に欠かせないのが、「船内新聞」。毎日、部屋に人数分配布される。表面は、水先案内人(ゲスト講師)の企画の告知などが載る「新聞面」。裏面は、その日の企画の時間場所がテレビ欄のように一覧になっている「ブッカー面」。
(ある日のブッカー面の一部。)
船内の生活は、船内新聞なしには成り立たない。夜9時頃に部屋に届く船内新聞を見て、明日の予定を立てる。起きる時間を考えたり、昼食・夕食の時間を調整したり。船内イベント(運動会とか)の実行委員をしていたらその準備もある。自主企画をやるなら、その時間は空けなければいけないし、人を呼ばなければ。どの企画に行くか、行きたい企画の時間がかぶっていないか。。
船内新聞に、乗船者も関われる。
そんな船内新聞は、それぞれ新聞面担当とブッカー面担当のスタッフがメインになって毎日発行までこぎつけるのだが、その他多くの人が関わっている。
新聞面は、水先案内人の企画やその他船内企画の告知であれば、大抵、それを担当しているスタッフが告知記事を書く。だが、新聞には乗船者を紹介するコーナーもあり、そこは主に、乗船者の有志(ボランティアスタッフ)が記事を書くのが通例だ。また、イラストが得意な人がいれば、記事に添えられるイラストなどを描くことができる。みんなが必ず読む船内新聞に、乗船者も関わることができるのだ。
「船内チーム」の活動も、ピースボートの面白さ。
上記で書いた有志の活動は、「船内チーム」の活動だ。船内チームは以下の7つがあった。
- 新聞チーム…乗船者や水先案内人を取材して新聞記事を書く
- ブッカーチーム…各企画の詳細を整理・確認して新聞の裏面に入力していく
- 企画チーム…船内生活を盛り上げる企画の立案・運営をする
- PAチーム…各企画や出港式の音響を担う
- 映像チーム…毎日放送されるミニ番組「クルなび」や、船旅のDVD用の映像を取材・編集する
- Pセンチーム…企画に使う文房具や寄港地用の「地球の歩き方」を貸し出したり、細かい問い合わせに対応するピースボートセンター(通称Pセン)の運営
- WEBチーム…ピースボートのHPにあるクルーズレポート(私が参加した92回クルーズのはこちら)の記事を書く
チームによって活動頻度、人数もばらばら。有志のボランティアなので、やりたい人がやる。若い世代はだいたい何かしらのチームの活動をやっていた。それで、私は新聞チームの活動をしていたということだ。
乗船者が自ら企画ができる「自主企画」もそうだが、ピースボートは乗船者を巻き込んでみんなで運営していくことが大きな特徴だ。今までやったことがなくてもチャレンジできて、やろうと思えば3ヶ月半続けられて、多くの人に喜んでもらえる、そうないチャンスだと思う。
書いた記事数、2ヶ月で21本。
私は90回クルーズの体験乗船で船内チームを知り、そのときは約2週間しか乗船しなかったのでチーム活動には関わらなかったが、長期間乗るなら新聞チームかWEBチームで「書く」経験を積みたい、と思った。というか、「書く経験を積みたい」「乗船者へのインタビューを通して色んな人生の話が聞きたい」と思ったことも、フルクルーズ乗ろうと思った動機のひとつだ。
そして92回クルーズで、「船内チーム紹介」の企画が開かれたときに足を運び、少数精鋭で、かつ乗船者に確実に届く新聞の活動を選んだ。新聞チームの活動は、船内生活の軸となった。
書いた記事数は、約2ヶ月で21本。乗船者の人物紹介が13本、水先案内人の企画の紹介が6本、コラムが2本。約2ヶ月というのは、クルーズ前半で書きすぎて燃え尽きて&後半は洋上プログラムに注力したりして、最後の1ヶ月ほどは新聞の活動は何もしなかったからである。
ピースボートは、良くも悪くも、やろうと思えば何でもできる。スタッフも気さくだから、特に若い乗船者のことはお客さんというより仲間として見ている(逆もしかり)。みんなが対等でいられる雰囲気は私はすごく好きだけれど、一方で、頼まれることを安請け合いしたり、何にでも首を突っ込むと本当に毎日多忙になる。私は序盤やる気満々だったため新聞に注力しすぎて、一時6日連続で取材〜執筆を毎日やって疲弊した。自己管理の大切さを学んだ。
インタビューから原稿を出すまで。
記事を書く流れは、人物紹介であればこんな感じ。
- 「面白そうな人」に新聞で取材したいと聞いてアポをとる。それか、スタッフにつなげてもらう。
- 30分〜1時間くらいかけて、話を聞く。なぜ乗船したのか、乗船前は何をしていたのか、今どういうことをしているのか、船をおりたらどうするのか、、などなど。録音させてもらう。同時にパソコンでメモも取る。
- 顔写真を撮らせてもらい、名前もちゃんと確認する。
- 録音した会話から文字起こし。
- 記事を書き出す。文字数は400字いかないくらい。
- ピースボートセンター(事務局)の裏の作業スペースに行って、パソコンで「朝刊太郎」なる古いソフトを開き、原稿や写真を枠にはめて文字数調整。
(船内新聞の作業スペース。)
船内新聞の記事を書いて、良かったこと。
- 船内での活動が、新聞として記録になった(しかも名前入り)
- 聞きたいことを聞き出すインタビューのやり方が体感的に身に付いた
- 「取材」という名目で、普段はなかなか話せないことを話せた
- 乗船者やスタッフ合計1000人近くに読んでもらえるものが書けた
新聞の活動をやって良かったことは色々あるけど、特に大きいのは上の4つだと思う。インタビューは、なかなかきっかけがないとできないことなので、船で思う存分トライできて良かった。そして、ほぼ確実に数百〜千人もの人に読んでもらえる環境なんてそうない。
そして、人生には色んなドラマがあるなということを実感した。多くの人にとって、ピースボートに乗船するというのは人生の中でも大きな節目になりうる。だからこそ、その人の過去・現在・未来を船の上で聞けるというのはとても有意義だったと思う。