ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

論理より感情。多様性を大事にしたい。映画「The Greatest Showman」に時代が求めるものを見た。

やたらSNSなどで見かけるので気になって、映画「The Greatest Showman」を見てきました。そんなに期待してなかったけれど、2時間切ってると思えないくらい濃密で、音楽には圧倒され感動しっぱなし。評判が良いのもすごくわかったし、大好きな作品になりました。

でも、評論家からは低評価だけど一般の観客には大ウケして大ヒットしているということや、作品が基づいているP.T.バーナムのやり方などを美化しすぎている(いいとこ取りしてるだけ)というコメントも見かけ、この作品をとりまく環境に今という時代が凝縮されているような気がしています。

そんな感じのことを書き留めておきます。笑

 

映画の概要

 

1:あらすじ

舞台は1800年代のアメリカ。主人公は、「サーカス」を初めて設立した、ショービジネスの興行主P.T.バーナム。実在の人物です。生まれた家や階級で人生が決まっていたような時代に、貧しい家の生まれでありながら、ニューヨークで町の「変わり者」を集めてショーを行い、仲間とともに成功していくさまを描いているストーリーです。

その「変わり者」というのは、髭が生えた女性、低身長症の人など、世間から差別され、笑われ、避けられてきた人たち。「町の恥さらし」として一部の人からは反発を受け、上流階級の人たちや批評家からは、ショーの芸術性のなさも批判の対象になりました。

しかし若手劇作家のフィリップを事業に誘い、上流の人々も取り込んでいこうとしたり、フィリップのコネでイギリスの女王に謁見したり、ヨーロッパいちのオペラ歌手をアメリカに誘いツアーを主催したり。

一時、仲間や家族を顧みずショーの興行やツアーが危ぶまれ、バーナムの生活も崩れかけます。しかし本当に大切なものに気づき復帰。

2:特徴

この映画はミュージカル映画なので、最初から最後まで随所に歌と踊りが入ってきます。音楽チームの2人(ベンジ・パセック、ジャスティン・ポール)は去年大ヒットした映画「LA LA LAND」にも参加していたようだし、主人公P.T.バーナムを演じるヒュー・ジャックマンは「レ・ミゼラブル」でも主演、フィリップ役のザック・エフロンは「High School Musical」シリーズで主演だったということで、音楽に力を入れているという印象。

 

感想を述べる前に、、

私が映画を見に行く前、以下の記事を読んでいて、見終わって読むとここで言われていることに共感ばかりです。これから私が書くこともかなりこの記事に依拠するので、リンクを貼っておきます。

toyokeizai.net

 

「今という時代」を感じるポイント 

1:ストーリーに深みはないけれど、音楽が圧倒的。心と魂が揺さぶられる。 

まず思うことは、音楽に圧倒されたということ。ゴスペル×バンドサウンドという感じの音楽がメインかと思うのですが、すべて恐ろしくキャッチー。1800年代を描いているのに音楽は現代的、というところはかなり困惑したけれど、ストーリーに合致した音楽の力に圧倒されてただただ感動してしまいます。映画館の大音量で、耳だけでなく体全体で聞くことができたのもあってか、心が、魂が、揺さぶられているような感覚でした。

去年話題だった「LA LA LAND」は、曲は悪くないけど歌唱力がいまいちで、入り込めない印象だったのですが、今回は曲も良いし、歌唱力も皆「本物だ!」と思えるのでかなりハマりました。

▼映画製作前、歌と台詞の読み合わせの際の「This Is Me」。生音だけでこんなパワーが生まれているのは本当にすごい。生きる喜び、歌う喜びを感じます。
『グレイテスト・ショーマン』 “This Is Me”ビハインド・ストーリー

ストーリーについては、ステージに上がる人たちにはいろんな人がいるのに、その人たちの今までの話は全然出てこない。そこを掘り下げるべき、という意見も読んだけれど、私は逆にそこは触れる必要はないと思いました。今までいろんなことがあったかもしれないけど、そんな過去に捕われず、今ともにショーを作り上げていく仲間になれた、ということが大切なんじゃないかと。

ストーリーはかなり単純化されていて、深みのなさも正直随所に表れています。終盤、バーナムが仲間や家族を顧みなくなり見放されたところから、また一緒に頑張ろう!みたいになる流れは、「そんな簡単にみんな気持ちが戻ってくるかね?」と引いて見てしまいました。

また、実在の人物の半生を描いているはずでありながら、当時のバーナムから、今の時代に通じる部分のみを抽出したようなストーリー作りです。作品について書いている海外紙の記事も見てみましたが、The Guardianが映画公開時に出した記事では以下のように指摘されています。

The problem is, the real-life PT Barnum was not exactly a crusader for social justice. Like many pedlars of 19th-century “freakshows”, Barnum was more interested in exploiting people than empowering them.

(訳)問題なのは、実際のPTバーナムは正確には社会正義の擁護者ではなかったということだ。19世紀に「フリークス(変わり者)ショー」を行った他の多くの興行人と同じように、バーナムは「変わり者」たちの地位向上よりも人々を搾取することに興味があった。

Hugh Jackman’s new film celebrates PT Barnum – but let’s not airbrush history | Film | The Guardian

そんな単純化された話でありながら、音楽で感動"させられる"感じが、わかりやすいものを求めがちな今という時代を映していると思います。中身はよくわからないけど見かけが良い・印象が良い・感動する、というような、論理<感情という構図。トランプ大統領の誕生や"インスタ映え"のベースはここにあると思います。

だからこそ、評論家からはあまり評価されなくても、観客には大いに受け入れられ大ヒットしているのです。そして同時に、こういう状況は、1800年代のバーナムを取り巻いた状況でもあるのです。

しかし感情(感覚)重視の世界は、悪いことだけではありません。この映画を世界中の人が見て感動していることを考えると、言葉や論理を超えて世界がもっと繋がれる可能性を感じます。

▼先ほどの動画と同じときの「From Now On」。こちらもすごいパワーに満ちあふれてる。

『グレイテスト・ショーマン』 “From Now On”ビハインド・ストーリー

 

2:ありのままでいい、違いがあっていい、というメッセージ

ショーのステージに上がる人たちは、これまで差別され、世間から隠れるように生きてきた人たち。居場所のなかった人たちにとって、徐々にショーのチームが家族のような存在になっていく。皆が個性を表に出してステージに上がる姿が何度も映し出され、そこにパワフルな歌詞と曲に乗った歌とダンスが入る。

住む地域・民族・身体・性格などなど、人にはいろんな個性がある。そんな個性をお互いに認め合い、発揮して、生かし合いながら共に生きていく。そんな理想を持ちつつ、そんなの無理だ、という揺り戻しも共存する今。でも、多様性があってこそ世界はすばらしい、ということをまた強く信じさせてくれる作品だと思いました。

また、最初は笑われることが怖くてステージに出ることも恐れていた人たちが堂々とパフォーマンスし、それが観客にも受け入れられる姿には、勇気をもらいました。映画の主題歌的な曲「This Is Me」のこの部分▼によく表れています。

I'm not scared to be seen
I make no apologies
This is me

見られるのを恐れたりしない
謝ったりもしない
これが私


The Greatest Showman - This Is Me [Official Lyric Video]

先ほども引用したThe Guardianの記事では、こんな言葉が紹介されていました。

The Greatest Showman, looks to be a timely celebration of outsiderness and inclusivity

“His belief was what makes you different makes you special,” Jackman has said of Barnum. “You can be discriminated for that but if you own up to it and we start to embrace everybody then it can be what makes life special and fantastic.”

ジャックマンはバーナムについて「彼の信条は、違いがあってこそ特別な存在になれる、ということだった」と言う。「その違いのせいで差別されることもあるかもしれないけれど、その違いを生かし、皆を受け入れ始めれば、その違いが人生を特別ですばらしくするものになりうる」

Hugh Jackman’s new film celebrates PT Barnum – but let’s not airbrush history | Film | The Guardian

The New York Timesでは、読者にツイッターなどで「作品の何がすごいのか」を募集してまとめる、という記事が出ていました。▼ www.nytimes.com

ここで挙げられていたのは以下のような点。

  1. It Celebrates Outcasts:社会から見放された人にスポットライトを当てている
  2. It Offers an Escape:逃げ道をくれる
  3. Everyone Can Enjoy the Music:みんなが音楽を楽しめる
  4. You Experience a Range of Emotions:映画を見て体験する感情の幅が大きい
  5. A Film for the People:みんなのための映画

この1番目のところで取り上げられていたコメントで、

At some point everyone feels like an outsider.
みんながよそ者のように感じている

という言葉があり、これはかなり当たっているのではないかと共感しました。自分らしくいられる居場所がないように感じる人が多いからこそ、今まで虐げられてきた人たちが表舞台に立ち堂々と輝く姿に勇気をもらえるんだろうな。

 

3:現実を忘れさせてくれる「エンターテインメント」

上の2番目で言われていることですが、閉塞感のある時代だからこそ「ザ・いい話」に仕上げられたこの作品が受け入れられているという面もあります。

映画の世界観としては、ショービジネスというのもあってかディズニーに似通ったところがあります。毒やえぐみのない、誰もが楽しめるエンターテインメント。歌もどれも覚えやすくていい歌詞。カラフルで迫力があったり、美しい画面づくり。

作品を見て、ショービジネスをはじめとするエンターテインメントは、今のアメリカをアメリカたらしめているパーツの1つだと改めて思いました。

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NYのブロードウェイ。見切れ席でミュージカル「アラジン」を見たときの写真。

 

まとめと、おまけ(作品に言及している海外紙記事)

初めて映画作品1つを掘り下げてみましたが、いろんな記事や評価を見比べながら映画について考えるのはかなり楽しかったです。笑

ミュージカル映画はいつも、最初から歌が入ると全然ついていけなかったり、突然歌いだすことに困惑したりもするのですが、今回改めてミュージカル面白いな、と思えました。今回のキャストが出ている、レミゼHigh School Musicalも見たくなりました。

私がこの作品が好きなのは、生きる喜びを感じさせてくれるからだなと思います。力をもらえる。また映画館でやっている間に見に行きます。

 

以下に、ざっと読んだ海外紙の記事をまとめておきます。

The Guardian 12/18

www.theguardian.com

The Guardian 12/20

www.theguardian.com

BBC 12/28

www.bbc.com

The Guardian 1/31

www.theguardian.com

The Guardian 2/7

www.theguardian.com