島根県邑南町で1ヶ月過ごしたインターンを振り返る。
もう1ヶ月経ちましたが、2月の2週間を海士町で過ごしたあと、島根県の真ん中ほどにある邑南町(おおなんちょう)に1週間滞在しました。この町にご縁ができたきっかけであるインターンについて、この記事ではまとめてみます。
学生インターンがきっかけ
2015年の夏、「島根県中山間地域研究センター」が主催する夏休み学生インターンに参加したことが事の始まり。
大学が3年間終わって、以下のような理由から、日本の田舎を知りたい!と思うようになっていました。
- 海外はいろんな場所に行ってきたけれど、日本のことは都市部しか知らない。私はほぼずっと横浜、両親は東京出身で、"田舎"もない。海外の田舎を見ても日本と比較ができず、何が海外らしさで、何が田舎らしさなのかわからない。
(これは高校の北米研修でカナダの地方都市にホームステイしたときや、大1の夏にヨーロッパ周遊旅行をしたときから漠然と思っていたことでした。) - 自分が社会と関わっていくイメージができなかった。学園祭の運営スタッフを3年間やって、最後の1年で役職に就いたところ自信喪失したのもあって、周りがしているような就活をする気になれなかった。今まで同世代としか関わってこなかったから、社会人として働くイメージがわかない。大企業を目指すことへの違和感、画一的な服装や態度を求められることへの違和感もあった。自分がやりたいことがわからないし、まだ学びたいことはある。
→「今までと違うところ」に行きたい!
他のプログラムなどもチェックしていたけれど、インターンというと課題解決やビジネス的視点のものが多く、まず地域を知りたいという私の志向とは合わないなと思っていました。
そんなときに、大学の掲示板で知ったのがこのインターンだったのです。
学生が1ヶ月島根県内の各地でインターンとして活動するというプログラム。主催は中山間センターですが、センターはいわば仲介・サポート役。学生を実際に受け入れるのは地域の団体や自治会で、そこでの活動も場所によって様々。そして私は、いちばんやることが自由そうな地域を選んで応募し、第一希望にしていた邑南町の銭宝地区に行くことになりました。
▼当時の募集要項はこんな感じ。
邑南町、銭宝地区とは?
邑南町は、平成の大合併で、2町1村の合併によってできた町です。人口は現在1万1000人ほど。島根県のちょうど真ん中ほどに位置しており、広島の中心まで車で1時間ちょっとなので、週末に出かけたり買い物に行くにはちょうどいいようです。
最近は、「日本一の子育て村」を掲げた施策や、「A級グルメ」と銘打って食や農業の分野を盛り上げていて、特に30〜40代の子育て世代の移住が増えつつある町です。
邑南町は公民館に力を入れていて、12ヶ所ある公民館区で物事が動くことが多いです。私がお世話になった銭宝(ぜにほう)地区は、「布施公民館」のエリアにある3集落で成り立っています。
銭宝というのは昔近くにあった古城・銭宝城から取っていますが、公民館の名前が布施なので、地域名としては布施と言ったほうがわかってもらいやすいという裏話もあります。笑
地区の人口は180人ほどで、その約半分が65歳以上。お店は個人商店が1つだけ。山と田んぼが広がる、のどかな場所です。
インターンでやったこと。
銭宝地区に入ったインターン生は私ともう一人の女子で計2人。インターン中の1ヶ月、本当にいろんな経験をさせてもらいました。事前に決まっていた活動内容は、こんな感じ。▼
- 地区に住む働き盛りの世代に聞き取り調査
- 地域イベントに参加(盆祭り、山登り、防災訓練など)
- 島根大学教育学部のゼミ(中山間地域をフィールドに研究をしていて、銭宝に毎年合宿に来る)の調査に参加・交流
- 他地区のインターン生と交流会
- 成果発表会(発表、地区のポスターやGISのマップの製作・掲示)
これに加えて、インターン生の興味関心を整理した上で、「地域マネージャー」として当時活動していた受け入れ側の方や中山間センターの担当スタッフの方の提案に基づいて、地区内や町内のいろんな場所へ行き、話を聞きました。以下がその例です。
最後の成果発表会では、ずっとこの地域に住んでいる方たちに向けて、外から来た私たちから見た地域の魅力を伝えることを主眼に据えました。今まで自分たちが育ってきた環境や、なぜこのインターンに参加したのかを話した上で、何がどう魅力的に見えるのか、どんな発見があったのか、ということを発表しました。
このインターンの良かったこと。
いろんな側面から地域を見れた
まず思うのは、いろんな方にお話を聞けたことで、本当にいろんな側面から地域を見ることができたということ。集落単位の動きから町単位の動きまで見ることができたおかげで、地域の物事の動き方や全体像がかなり把握できたのではないかと思います。
また、「"田舎"に漠然と興味がある」という状態から、興味関心を洗い出して、いろんな方たちにつなげてもらえたのがありがたかったです。柔軟に対応していただけたおかげで、自分の関心の方向性もわかりました。地域マネージャーの方が「中山間センターのインターンで…」と話をつけてくれたこと(これで話がつくコネクションやコミュニティが田舎っぽい)、それで話を聞かせてくださった方たちがたくさんいたことにも感謝です。
銭宝地区を選んだのは本当に偶然でしたが、島根大の先生や中山間センターの方によると、地域づくりへの積極性が町内・県内でもかなり高い地区ということで、そんな地区とご縁ができて良かったです。やる気もさることながら、笑顔で迎えてくれる方が多いし、良い意味で小規模な地区だからこそ、地区全体のことがつかみやすく、期間の割には深いところまで見聞きできた気がします。
好奇心に従って動けた
田舎だけでなくても、地域への関わり方、入り込み方というのは色々ありますが、活動内容が決まりきっているのではなく、知りたいことをベースに動ける形で入れて本当に良かったです。
私の場合、「学びたい!」という気持ち・好奇心に従って動ける環境だと自分らしくいられるなと思えていて、振り返ってみると、このインターンでは色んな方のおかげでそういう環境になっていたと思います。
いろんな同世代との出逢い
一番大きかったのは、現地育ちの同世代と友達になれたこと。聞き取り調査のお願いを公民館の方にしてもらい、予定がつく人は来てくれた、ということがきっかけで、数人の友達ができました。地区の皆と私とでは、育ってきた環境や今までの経験が全然違って、コミュニケーションの取り方に苦労したり、もはや異文化だなと思うことも多々ありますが(笑)、それも面白いと思えています。今まで大学で大学生としか会ってこなかったからこそ、高卒で働き始めた人、大学進学後帰郷して働いている人などとの出会いはかなり刺激的で、こういう出逢いを求めてた!という感じです。
島根大学の学生や先生との出逢いも面白かったです。東京の私立大学に通う私としては、地方の国立大学に通う学生たちと交流できたことで、「大学」のイメージが広がったように思います。フィールドに基づいて研究をしている、少数精鋭かつ和気あいあいとしたゼミの姿もうらやましくなりました。
地区の同世代も、島根大学の学生たちも、「なんでこんなところに来たの?笑」という感じで、私たちのことを良い意味で面白がって興味を持ってくれたことがありがたかったです。
そして、他地区でインターンしている学生との出逢いも印象的でした。自分のところだけでは私ともう一人しかいなかったけれど、他の数地区の学生とも出逢えたことで、成果発表会の見学に行けたり、興味関心が似ている者同士いろいろ語らうこともできました。
上で挙げた人たちとは、今も時々連絡を取ったり、東京や島根で会ったりしています。こういうつながりができたことがいちばん嬉しく、財産になっています。
このようなインターンが入り口だったからこそ、地区や町のことが好きになれて、インターン以降何度も遊びに行っているんだと思います。そして遊びに行くだけでも、いつもいろんな出逢いや発見があります。
いまや、邑南町、銭宝地区は、思い出すだけで笑顔になれる場所です。