ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

2020年読書録。ハマった作家、映画きっかけで読んだ印象的な本。

2020年、内心「映画と本を52作品ずつ」(=週に1作ずつ)という目標を掲げ、その結果本は64冊読みました。

過去記事も貼りながら、印象的だった本などをまとめてみたいと思います。

 

ハマった作家

2020年は、「この作家の作品を読んでみよう」と思って読んだ本が多かった年でした。ハマった作家や作品群をいくつか挙げてみます。

 

高野秀行

年の初めに熱狂的にハマり、とりあえず地元の図書館や古本屋で見つけた本は読みました。秋に出た最新刊「幻のアフリカ納豆を追え!」も読み、1年の間に読んだのは以下の計16冊になりました。

  • アジア新聞屋台村
  • 謎の独立国家ソマリランド
  • モリーエス
  • 幻獣ムベンベを追え
  • 恋するソマリア
  • 未来国家ブータン
  • ビルマ・アヘン王国潜入記
  • ワセダ三畳青春記
  • 腰痛探検家
  • 世にも奇妙なマラソン大会
  • 怪魚ウモッカ格闘記
  • イスラム飲酒紀行
  • 西南シルクロードは密林に消える
  • 謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉
  • 辺境メシ ヤバそうだから食べてみた
  • 幻のアフリカ納豆を追え! そして現れた〈サピエンス納豆〉

春までに読んだ作品は以下の記事にまとめました。

mizukifukui.hatenablog.com

 

朝井リョウ

以前も何冊かまとめて読んだことがありましたが、今年はラジオ番組「ヨブンのこと」で彼の考えに触れ、「どんな雰囲気の作品だったっけ?」「まだ読んでないのもあるな〜」と思いつきいくつか読んでみました。また、最新刊の単行本も買いました。そして思い出したのは、「この後味の悪さが、朝井作品…。」ということでした。

mizukifukui.hatenablog.com

今年読んだ作品を挙げておくと、

  • 発注いただきました!
  • チア男子!!
  • 少女は卒業しない

基本的にしょうもないことを話しつつ、たまに重いテーマをぶっ込んできた「ヨブンのこと」。今年3月末で終わってしまうそうです…。悲しい。でもこれまで、いろんな気づきをくれました。

mizukifukui.hatenablog.com

 

司馬遼太郎街道をゆく

海外旅行などが縁遠くなってしまったこともあり、ブックオフで見つけて知った旅行記街道をゆく」にハマり、アジア諸国旅行記を中心に以下の6作を読みました。

小説の方はなかなか長編が多そうで手付かず。いつか読んでみたいです。

 

シェイクスピア

作品名があまりに有名すぎて、ちょっと知った気にすらなっていましたが、初めて作品を読んでみました。

「四大悲劇」と呼ばれる

と、題名はもちろん中身の物語も何かと引き合いに出される

を読みました。500年も前の作品とは思えないほど普通に楽しめて、普遍性に驚きました。劇の脚本が元になっているので、小説などとはかなり違う読み方になりますが、読みやすかったです。

 

映画きっかけで読んだ本

近年は本よりも映画の方が触れる時間が多くなっていたので、今年は映画で知った本を読むことも何回かありました。そうして読んだ本はどれも印象的で、「出会えてよかった!」と思うものばかりだったので、ここにまとめてみます。

 

坂上香「癒しと和解への旅」など:映画「プリズン・サークル」

ある刑務所で取り入れられている、受刑者向けのプログラムを追ったドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」。刑務所のドキュメンタリーというだけでも新鮮でしたが、受刑者たちの辛い過去や、真に罪を反省していく様子など、感じること・考えることの多い作品でした。

mizukifukui.hatenablog.com

そんな作品を撮った監督・坂上香さんは、映像作品だけでなく以下のような書籍でも、受刑者の更生プログラムについて伝えています。

  • 癒しと和解への旅 犯罪被害者と死刑囚の家族たち
  • アミティ 「脱暴力」への挑戦 傷ついた自己とエモーショナル・リテラシー坂上香/アミティを学ぶ会 編)
  • ライファーズ 罪に向きあう

これらの本も、映画と同様に考えさせられることがとても多く、本を読んでから今まで、まとめようと思ってもまとまらない感覚があります。

本の中で印象的だった内容や言葉は数え切れませんが、一番良い意味で刺さったのは、「癒しと和解への旅」のあとがきの言葉。

この社会には、いかに傷ついた人が多くいることか。自分が傷ついていることに気がつかずに、もしくは、傷ついたまま放って置かれていることに恨みを抱いたまま、そのはけ口を他人や身内や自分自身に向け続ける人々であふれている。
(p294)

これ本当にその通りだなと、心底共感したし、いつもは見ないふりをしてやり過ごしている自分自身の傷にもそっと触れられた気がして、涙が出ました。

癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち

癒しと和解への旅―犯罪被害者と死刑囚の家族たち

  • 作者:坂上 香
  • 発売日: 1999/01/26
  • メディア: 単行本
 

 

ちょっと話が逸れますが、私自身、この数年“向き合えそうで向き合えない”という感覚であり続けている「罪悪感」がいろんな面であります。

mizukifukui.hatenablog.com

mizukifukui.hatenablog.com

だから近年は、罪とは何か?みたいなことに関するテーマはよく引っかかり、先日もロシア文学の代表的作品でもある、ドストエフスキーの「罪と罰」も読んでみました。 

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

罪と罰〈上〉 (新潮文庫)

 

物語の主人公が犯罪を犯し、その犯人は特定されないまま。自首するか逃げ切るか、誰を信じていいのか、と様々な苦悩を抱えていく主人公には、共感する点もありました。

 

スタインベック怒りの葡萄」:映画「The Public」

図書館を舞台にある“事件”が巻き起こっていく、映画「The Public」。

mizukifukui.hatenablog.com

この中で、主人公が文章を引用した本が「怒りの葡萄」という作品でした。

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫)

 

この物語の舞台は、1930年代のアメリカ。農業の機械化によって代々受け継いできた土地を奪われ、カリフォルニアにオレンジを収穫する仕事があると聞いた一家が、資金も体力もぎりぎりの状態で大陸を横断していく物語です。

仕事が沢山あると聞いてやってきた一家は、同じようにやって来た溢れかえる労働者と、その分足元を見て過酷な環境・低賃金で働かせる農場主たちに愕然とします。

物語の終盤、以下のような描写があります。

  • 摘発されない犯罪が、ここではおこなわれている。泣くことでは表現できない悲しみが、ここにはある。われわれのすべての成功をふいにする失敗がある。
  • 人々の目には失望の色があり、飢えた人たちの目には湧き上がる怒りの色がある。人々の魂のなかには怒りの葡萄が実りはじめ、それがしだいに大きくなっていくーー収穫のときを待ちつつ、それはしだいに大きくなっていく。
    (p219)

おそらくここを「The Public」では主人公が引用していました(1回見ただけなので不正確かもしれませんが。参考:【編集マツコの 週末には、映画を。Vol.67】「パブリック 図書館の奇跡」 | 【オレンジページnet】)。「10代必読の本」であり、また、ホームレスたちや自分の思いを代弁するための言葉として。

また、この作品は、アメリカ図書館協会が「図書館の権利宣言」を発表するきっかけになったそうです。

www.jiji.com

このように、図書館との関わりが深い作品である、「怒りの葡萄」。これを映画の中に取り入れたのは見事だなと思いました。

 

金子文子「何が私をこうさせたか」:映画「金子文子と朴烈」

1920〜30年頃の実話を基にした韓国映画金子文子と朴烈」。

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主人公の一人・金子文子は、幼い頃からいろんな大人の元を転々とさせられ、誰にも大切にされなかった幼少期の苛烈な経験から、社会主義運動を行う朝鮮人の結社に共感を覚え参加します。

映画では、監獄で自伝を書き、信頼する仲間に原稿を預ける様子が描かれます。そして実際にそうして出版されたのがこの「何が私をこうさせたか」という本でした。

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

何が私をこうさせたか――獄中手記 (岩波文庫)

  • 作者:金子 文子
  • 発売日: 2017/12/16
  • メディア: 文庫
 

私が読んだ文庫版は、ちょうど映画の公開後に出ており、やはり映画の反響や要望があったものと思われます。

1930年代に書かれた文章でありながら、仮名遣いが改まっているのもあってか、最近書かれた文章かのように読みやすかったです。その分、彼女の憤りや強い意志が胸に迫ってきました。

冒頭に「すべての親に読んでほしい」というようなことを書いていた通り、子どもの頃受けた理不尽な仕打ちへの憤りを価値観の根幹に持っていることが随所で伝わってきました。

過酷な状況を生き抜いてきた彼女の強さがとても伝わってきて、勇気をもらえる本でした。また自分を鼓舞するために読み返したいです。 

 

「82年生まれ、キム・ジヨン

本を基に映画化もされ、私は映画をまず見ました。

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主演のコン・ユとチョン・ユミの二人は、実際にあった児童虐待を基にした映画「トガニ」(2010年)でも主演のペア。私は昨夏見て、虐待のシーンがなかなかリアルで怖かったし、見た後もしばらく気が沈むほどの重い作品でした。。

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で、「キム・ジヨン」の方も社会性あるテーマも含め期待していましたが、なかなかよかったです。そして、「やっぱり本も読んでおこう」と思い、本も読みました。

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

82年生まれ、キム・ジヨン (単行本)

 

私が一番印象に残ったのは、主人公のジヨンが幼い頃、お母さんが「先生になりたかったんだよねぇ」と言い、昔も今も家族のためにその思いを犠牲にしてきたことをジヨンが知った時の描写です。

お母さんは自分の人生を、私のお母さんになったことを後悔しているのだろうか。長いスカートの裾をグッと押さえつけている、小さいけれどずっしりと重い石ころ。キム・ジヨン氏は自分がそんなものになったような気がしてなぜか悲しかった。
(p31)

こうして「母の人生と、娘の私」について繋げて考えたことが、自分の自尊心や“母親観”、将来観になんとも言えない重い影を落としていることを、私はまたジヨンとは違う形ながらも持っているなと、久々に明るみに出された感覚がありました。

私の母はジヨンの母とは逆に、充実した会社員生活を30代後半まで続け、のちに私の出産を機に退職しました。しかし私は「母が長く働いていたから、私と母の年齢が離れている」と、昔幼心に思ったことがあります。親と年が離れていることで感じた(と当時思った)寂しさや、“しっかりしなきゃ”と思った過剰な“責任感”は、「仕事のせいだ」と。そのため、女性が本格的に長期で働くことをポジティブに思えない時期が長かったです。


いろんな世代の人が、「自分」や「親」の姿を見いだせるような作品でした。

 

今年も52冊を目標に、色々な本を読んでいきたいです。