今年も「黄金町バザール2021」へ行ってきました。感想、印象的だった作品など。
毎年、横浜・黄金町界隈で開催されているアートフェス「黄金町バザール」。2019年から毎年足を運んでいて、今年も10月中に開催されているとのことで行ってきました。
内容の紹介もしつつ、感想を書いてみます。
概要・テーマ
2008年から毎年、だいたい黄金町駅〜日ノ出町駅の間のエリアで開催されている国際アートフェスティバル。昔、飲食店を装った風俗店「ちょんの間」が違法状態ながら長くあった地域で、その名残である小さい間口の建物を今はアーティストがアトリエや展示を行うスペースとして活用しています。
今年のテーマは「サイドバイサイドの作り方」。下の動画でディレクターさん曰く、コロナ禍で、対面せず横並びに椅子が並んでいる様子からアイデアを得たそう。
黄金町の小さい間口の建物が並ぶ様子や、英語のSide by Sideという曲に込められていた「一緒に協働する」というところを今後目指す、というようなことをテーマとして据えた、ということかと思います。
印象的だった作品
ではここからは、印象に残った作品とその感想をいくつか紹介します。
山本千愛:町内を合計100km歩く過程での、人との交流や気づき
作者は、長い角材を持って長距離を歩き、先が削れていく様や、過程である人との交流や気づきを文章や写真、動画で作品としています。
今回は、交通事故に遭ってしまいむち打ちの症状があり、一度に長距離を歩けないという「移動の不自由」がある状況で、黄金町駅〜日ノ出町駅の間800mを何度も往復し、合計100km歩いたそう。
使った角材も展示されています↓
会場の周辺でもあり私もよく通る道が舞台で、それほど地域コミュニティが強い場所とは思っていなかったけれど、毎日謎の行動をしている作者に話しかける地域の人が結構いたらしいことが意外でした。人それぞれ、「運んでいる」「測っている」など、作者の行動を観察して見立てていたことがわかるのも面白かったです。
また、日々使っているのであろう湿布のパッケージを開いて文章を書いているのもクスッときました。
「こういうのもアート、作品なのだなあ」と思いました。
阿部智子「swop installation」:布と紙、照明で生み出される幻想と奥行き
swopとは交換という意味だそう。同じ空間で呼吸するだけでも「交換」が行われていて、お互いに影響されないわけにはいかない関係を表現する試み…という感じだと思います。
それを今回は、布や紙を使い、透けることで相互補完的に完成する作品としていました。(現地で作品を読んだり見たりしたら「言わんとすることはわかった」と思えたのですが、こうして説明・言語化しようとすると難しい。。)
布と紙でできた宙づりの作品が照明で照らされて、透け具合や色合いが幻想的で奥行きも感じ、教会のステンドグラスのような神々しさを感じました。展示会場は古い建物の2階で、階段を上がってこの↓景色が見えた時は「うわぁ」と声が出ました。
壁に貼られた紙の枚数、柄のモチーフの多さも、作者の苦悩や熱意を感じて、すごいなと思いました。
とても雰囲気のある作品でした。今年の作品では一番好きかも。
金子未弥「都市計画」:高架下という場自体も発見
人の記憶にある場所の話を聞いて、想像したものを構成して「架空の都市の計画」として高架下で展示がありました。
普段は閉ざされている高架下の空き地を使っているということ自体も、こういう町中でのアートイベントならではでわくわくしました。会場周辺の高架下は、黄金町バザールを運営する団体が持つスタジオをはじめいろんな活用のされ方をしているので、「こんなところ(まだ)あったんだ!」と、新しい発見になりました。
作品も、工事で使われるような金属の足場や標識、ガードレールが形を変えて作品になっていて面白かったです。冒頭に紹介したような作品の経緯を知ると、一番奥の作品は連なる山のように見えて、なるほど、そういう表現か…!とまた違った見え方になりました。
三ツ山一志:町の隙間に現れる猫たち
こちらも「町ならでは」の作品群。会場周辺の様々な場所に、猫の木彫りがありました。
町にいる「地域猫」から発想を得たようで、仏が33種類の姿に化身して現れるとの言い伝えから、仏の化身としての猫のいろんな姿(手のポーズなどが様々)を像にしているようです。仏像の猫バージョン、という感じ。
本当に、「こんな隙間に?!」というような場所に作品があって、見つけて覗き込んだりするのが楽しかったです。
トモトシ:「犬死に」の表現
普段見過ごされているものに目を向け(させ)る、というようなテーマで作品を作っているようです。今作は「犬死に」を表現していて、犬の着ぐるみを着て町に出た様子の映像や、その着ぐるみの犬が息絶えている様子の展示がありました。
何も知らず外から見るとなかなか怖いです↓(写真右側で犬が倒れています…)
映像では、町中にいるペットの犬と並んで座ったり、通りで倒れこんだりしていて、「これ町で見たら怪しすぎるな…」と思わずにはいられず、シュールさで笑えたりもしました。
でもそれは着ぐるみだから目立つ・コミカルに見える、というだけであって、実際に「犬死に」しそうな人を町で見たりしたら、怪しいとか思わず知らんぷりしてしまいそう。社会的な指摘も感じた作品でした。
年を経るごとに慣れもあってか、作品を見る感覚や新鮮さが鈍ってきているのを感じながら回った今年。それでもこうして感想をまとめて見ると、それなりに発見や面白さを感じていたなあと思えました。
でも私としては、社会や地域に関する問いやメッセージ性がある作品や、圧倒されるような雰囲気・世界観のある作品が好きなので、そういう作品があまりなかったように思われた(orあったとしてもほぼ刺さらなかった)のは残念でした。コロナ禍で、何かを突きつけるような強いものは皆が求めるものと合わない、みたいなのはあると思いますが。
今後の黄金町バザールを、また楽しみにしていたいと思います。
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過去の「黄金町バザール」へ行った時の感想の記事です。