ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

実話のテロ事件に基づいた映画「ホテル・ムンバイ」。テロを追体験したようで震え上がった…

先日、映画「ホテル・ムンバイ」をみてきました。実際にインド・ムンバイで起きたテロ事件に基づいた話ということで、「ハフポスト」のこの記事をざっと読んで気になっていました。

www.huffingtonpost.jp

この記事が書いている2点について、私は1点は真逆の感想を持ち、1点は同意、という感じでした。てか、この記事から伝わる映画の姿とは印象が全然違って、ひたすら怖かったです。

実際の事件や、この記事のことにも触れつつ、内容や感想を紹介します。

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あらすじ

2008年11月にインドの大都市ムンバイで起きた同時多発テロを基にしている作品です。

映画の舞台は、テロの標的の1つとなり、多くの宿泊客やスタッフが閉じ込められたタージマハルホテル。宮殿のような超高級5つ星ホテルで、外国からの客も多い中、協力しながらそれぞれが生き抜こうとする様を描いています。

犯行に及んだのは約10人の貧しい青年たち。指導者から携帯電話で指示を受けながら、人々に銃を向けていきます。

 

 

実際のムンバイのテロ事件

では、実際にあった事件の様相をまとめてみます。

  • 事件の日時:2008年11月26日 夜〜29日午前
  • 場所:インド北西部の大都市ムンバイの、タージマハルホテル、トライデントホテル、チャトラパティ・シバジ・ターミナス駅など
  • 無差別発砲により、死者195人(うち外国人22人)、負傷者約300人(2008.11.30AP通信)
  • 「デカン・ムジャヒディン」という組織が犯行声明を出した
  • 特にイギリス人、アメリカ人を選別し人質に取ろうとした。

 参考までに、Wikipediaのページはこちら▷ムンバイ同時多発テロ - Wikipedia

タージマハルホテルではテロ犯が立てこもり、制圧されるまで3日かかりました。ここでの死者は32人。しかし一方で、その他500人ほどの宿泊客・スタッフは生還しました。

 

感想

テロの追体験。ひたすら怖かった…

この映画はまさに、「テロの追体験でした。

下手に逃げてテロ犯に見つかれば撃たれる。さっきまで一緒にいた人が撃ち殺されていく。いつ自分の居場所が見つかってしまうかわからない。緊迫した状況がリアルすぎて、2時間見ているだけでも緊張感で疲弊しました…物理的に肌寒かったのもあってか(それか怖さから寒気がしたのかも)、半分くらいの時間本当に震えが止まらなかった…

こういう系統の作品慣れてないし、映画館で見たからなおさら銃声が大きく響くし、心臓に悪すぎました。

ホラーやサスペンス、アクションの映画が好きな人には、このリアルさはおすすめできるかもしれないけど、そうでないなら見ない方がいいかも、、

でも一方で、「テロとはこういうものだ」と突きつけられた気がしています。日本ではしばらくテロ事件と言えるものはなくて、テロ=世界のどこかで起きてるもの、というくらいの認識しか持てずにいましたが、無差別殺人や銃の恐ろしさを実感しました。そして、それぞれの犠牲がどれだけ大きなものかということも。

実際に巻き込まれてしまったらどうしたらいいんだろう?とも考えたし、日本のテロ対策は十分なんだろうか?何かあったらすぐに解決できるんだろうか?とも考えさせられました。

 

指導者は見つかっていない「未解決さ」で、怖さ2割増。

実際の事件でも、実際にテロを起こした青年たちと密に連絡を取り指導したリーダーがいたようですが、パキスタンにいるらしいというのもあって捕まっていないそう。(最後、エンドロールの前の字幕で紹介があります)

実際にあったことだとしても、年数が経っていたり、ちゃんと解決していれば「完全に過去のこと」と割り切って見れます。しかし「10年前」の「未解決事件」となると、「またこんなことがあるんじゃないか」と怖さが増します…

「よかった」と安心できる時を与えない、恐ろしい作品でした。

 

「実行犯もまた、同じ人間」とは、到底思えず。

先ほど挙げた「ハフポスト」の記事では、「テロリストの人間性」についても取り上げられていました。私はそういう描写を期待して見に行ったのですが、こうして記事で取り上げるほどのものは感じませんでした。

確かに、「テロリストがテロの最中に家族に電話する」というシーンもあったし、彼らが超高級ホテルなど縁のない暮らしをしてきたことも随所で描写されていました。

でも、それは本当に一部としか思えなかった。物語のメインは「渦中を生き延びようとする人々」であって、無差別に人を撃ち殺していくテロリストに人の心は感じなかったです。ひたすら、「怖い」「凶悪犯だ」としか思えなかった。

貧しい青年がそうなるまでの過程をもっと描かないと、「同じ人間」とは思わないかな。

だから逆に、「これでテロリストの人間性を描いてるって評されるってことは、他のこういう作品ではどんだけ描かれてないの」と思ってしまいました。

 

「主役」はいない。生き延びようとする皆がそれぞれ主役。

この作品は、「主役がいない」と思いました。ポスター等では、ホテルの従業員アルジュンが一番大きく配置されていますが、ホテルの料理長やロシア人客、アメリカ人男性とインド人女性の夫婦とその赤ちゃんとベビーシッターなどなど、いろんな人のストーリーが重複しながら進んでいきます。

みんなが生き延びようと下していく様々な判断が、まさに命を左右する。こんな状況でも、自分のこと以上に家族を思って動いたり。そういう描写には人間味を感じました。

だけど、怖さが凌駕していて感動とかは感じなかったです、、

 

映画だけ見ると「イスラーム=やばい」と思われそうで、もやっとする。

テロリストたちはイスラーム教徒だとわかる描写が、随所にありました。

  • 「神は偉大なり」と言って突入していく
  • 豚肉を食べてしまったと気づいて、吐いた(本当は違ったけど)
  • 同じイスラーム教徒の女性は殺せなかった

などなど。

事実に基づいているだけだとはわかりつつも、他のイスラームに関する知識がない状態でこの映画だけ見たら「テロリスト=イスラーム=やばい人たち・危険」というステレオタイプが出来上がってしまいそう。イスラームに対する偏見の助長になってしまう気がするんです。

逆にテロリストたちも「外国人は敵」と教え込まれていたり、型にはまった考え方しかできない状況に置かれていたと思うので、ある意味「偏見の再生産」が起きているのかもしれません。外国による搾取や干渉などを恨む気持ちはわかるし、欧米諸国も日本も、「関係ない」「被害者だ」というだけでは済まないとは思うけれど。

また、事実に基づいていてこれだけリアルに怖いとなると、これまで途上国も含め海外に何度も行ってきた私でさえ「海外こわ〜」「インド行きたくない」と思ってしまいました、、

良くないステレオタイプを色々生みかねない作品になってしまってるのは残念です。ただ、「こんな事件があった」ということを体感するのには向いてると思うし、映画以外のところで他の情報や知識を身につけてバランスを取ることが求められます。

 

ちなみに:「神は偉大なり」の意味合い

イスラーム教徒がよく口にする言葉「アッラーフ アクバル」。お祈りの時も言うし、イラクの国旗に書かれているアラビア語はこれです。

日本では大概「神は偉大なり」と訳されますが、分解すると

  • アッラーフ=神
  • アクバル=「大きい・偉大」の比較形(英語のgreater的な。「より偉大」)

という感じになるそう。

そして、テロリストが犯行前などにこれを言うのは、「敵に向かうのは怖いけれど、神はより偉大であり、その神は私たちの味方だ」という意味合いがあるからだそうです。自分を奮い立たせて、勇気を出すための言葉なんですね。(大学の授業で聞いた話です)

テロの文脈で聞くことが多いから不穏な言葉のように思われてしまいそうですが、本当は日常的に使われています。

逆の意味合いで、「すごい!」と言うような時にも使うそうで、「神もすごいが、この業績もすごい」みたいな意味合いで使うそうです。

 

事件報道について考えさせられた

映画の中でも、実際の事件でも、テロリストたちやその指導者は、リアルタイムで詳しく繰り広げられるマスコミの事件報道やSNSを見て、ホテル内に残っている人の居場所や動向を掴んでいたようです。

2008年当時は、SNSは黎明期。今こんな事件が起きたら、もっと多くの人が助けを求めてSNSにだっていろんなことを書いてしまいそう。

マスコミは、町の人や巻き込まれた人を知っている人などの「知る権利」のため動いていると言えますが、それをやりすぎてしまうことのデメリットを考えさせられました。事件に近くない人たちの「知る権利」まで満たすのは、すぐじゃなくてもいいのかもしれない。

 

結論:怖さとステレオタイプに気をつけよう。

結論から言うと、私はそこまでおすすめはしない作品です。だけど、見たいのであれば

  • テロの様子がリアルでかなり怖いこと
  • 感化されすぎるとステレオタイプに繋がること

は念頭に置いて、それでも良いなら見て欲しいと思いました。

ここまで怖かったのは、映像・物語・演技などどれも本格的だったから。そのレベルの高さは素晴らしかったと思うので、そういう点では良い作品でした。