ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

東京国際映画祭で、世界の映画・監督と出会う。2021年に見た5作の感想。

先日10/30から11/8まで開催されていた、東京国際映画祭。私はこれまで、存在は知っていながら実際に行ったことはなく、今年の開催は映画館の予告で知りチェックしてみました。すると予想以上に興味のある作品が多かったので、時間をとって計5作見に行きました。これでも絞ったのですが…。

映画祭の紹介や見た映画の感想など、まとめてみたいと思います。

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映画祭の概要、様子

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今年で34回目となる東京国際映画祭。世界各国の新作映画や日本のアニメ映画など、部門別に様々な映画が上映されました。

これまでメイン会場は六本木でしたが、今年からは日比谷、有楽町、銀座エリアへと移転。エリア内のホールや映画館で作品上映やイベントが行われました。

有楽町駅前やミッドタウン日比谷前の広場では、チケット売り場やビジョン、上映作品の一覧などが展開されていてイベントらしい雰囲気でした。

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しかし、世界各国からの監督・俳優の来日などは叶わず、その点イベント感はちょっと減ってしまっていたかも。場所柄、仕事や他の用事など様々な用途で町に来る人が多いので、「町全体がイベント一色!」とまではなりづらいのもちょっと残念でした。

 

TIFFトークサロンが楽しい!

監督・俳優の来日がない分、代わりにオンラインで監督などとモデレーターが話をするTIFFトークサロン」が生配信されました。事前にサイトから質問を送れて、答えてもらうことも叶いました。

コロナ禍以前はどうやっていたかいまいちわからないのですが、私はこの配信のやり方はいいなあと思いました。上映後すぐ監督のトーク、というわけではなかったおかげで、映画の内容や感想を自分の中で振り返った上で質問を送ったりトークを見れたりしたので、かなり満足できました。

また、YouTubeで配信だったおかげで、アーカイブを見れば一時停止や早回しも自在。自分のペースで見れて助かりました。今後も続けて欲しい取り組みです。

そもそもこうして、映画監督の話を聞けたり質問ができたりするのも、映画祭ならでは。ミニシアターでさえ上映されなさそうなレアな映画が観れることと合わせて、「映画祭っていいな!」と思えました。

 

見た作品、感想

ではここから、私が見た作品の紹介と感想などをそれぞれ書いていきます。予告編やトークサロンの映像も貼り、トークサロンでの監督の話なども紹介します。

 

もろい絆


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インドの古都バラナシが舞台。セクシーなダンスで生計を立てるシングルマザーの女性と彼女に恋する男性、サリーを織る職人で内気な男性とイスラエルから旅行に来た快活な女性の交流などが描かれます。そしてその背景に重低音的に響き続ける、ヒンドゥー教徒イスラーム教徒の衝突が、物語の終盤に表立っていきます。

インド発の映画ですがいわゆる「ボリウッド」ではなく、素朴で丹念な印象が残る映画でした。監督の話によると、監督自身がバラナシ出身で、知られていないバラナシの姿を描きたかったとのこと。

実際に街で開かれているお祭りの時に撮影をしたりと町の雰囲気も印象に残る一方で、内気な男性が恋に落ちる様子や、イスラエル人女性が「ここでも私の国でも、みんな何でもないことで争っている」というような台詞など、普遍性も強く感じられました。


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四つの壁


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トルコ東部の内陸に妻子を残し、自身は西端の都市イスタンブールで音楽家として活動している主人公。海に憧れる妻のために海が見えるアパートの部屋を購入し、引っ越しのため家族でイスタンブールに向かう道中で交通事故に遭ってしまいます。妻子は亡くなり、自身も数ヶ月意識不明。意識を取り戻し、アパートへ帰ると、海辺に建物が建って海が見えなくなっていた…というところから始まる物語。

クルド人の物語ということだけで興味を持って見に行ってみたら、トルコ・イスタンブールが舞台で、行ったことがあるので懐かしく、そして監督バフマン・ゴバディ氏の過去作(「ペルシャ猫は誰も知らない」など)も(特に中東好きには?)有名で、色々驚きがありました。

劇中随所で演奏されるクルドの音楽や、俳優の演技力など、見所が多い作品でした。苦情を申し立てようと息巻く主人公の行動が、周囲の住人には迷惑行為となっていく脚本の展開も面白かったです。脇役の存在感やキャラクターの面白さも印象的でした。

トークサロンでの監督の話によると、主人公の男性を演じた俳優は、前から決まっていた俳優が「自分にはできない」と撮影直前に降りてしまい、イラン人ながらトルコ語もできて、脚本も書き演技もうまいとのことで連絡したら来てくれたとのこと。リハーサルは3日ほどだけで撮影したそうですが、そんなことは微塵も感じさせない、自然ながら力のある演技でした。


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こんな記事も出ていました。参考までに↓

news.yahoo.co.jp

 

ブローカーたち

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フィリピン・マニラの不動産会社で働く主人公は、ある日高級マンションのデベロッパーから、計画中のマンションの用地の確保を依頼されます。区長である父のツテを辿って広い土地のアテをつけるも、土地の一部には、居住権のない住人たちがスラムを形成しています。

区長が住人に退去をお願いするも、「市長選の時には居住権を与えると言っていた」「退去金が足りない」「仕事場も学校も近いから、他へは行けない」などの声が上がり、主人公は土地確保を急ぐ顧客との板挟みになり…という話。

「社会派ドラマ」との紹介文があり、「私が好きなやつだ!これはぜひ見たい!」とまずピックアップした作品でしたが、期待通りとても楽しめました。見た5作の中では一番好きでした。

監督自身、不動産業界で15年働いていたそうで、この映画のために実際のブローカーやスラムの住人にもインタビューしたそう。事実を基にしていて、映画の舞台となるスラムの様子もリアルでありながらも、物語としてもとても面白かったです。

女性の登場人物の多様さも印象的で、主人公の妻が飲食店を経営していたり、スラムの住人の仲介役となる女性はレズビアンだったり、一瞬出てきたある女性もトランスジェンダーとのこと(監督談)。「フィリピンに多様な女性がいるのは事実」ということで意図的に描いていたそうで、好感を持てました。

監督の映画への姿勢は共感しかなく、この監督の他の作品や、彼の師匠的存在の監督の作品なども見てみたい!と思っています。新しく嬉しい出会いでした。


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クレーン・ランタン


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アゼルバイジャン各地の景観を舞台に進んでいく作品。連続誘拐事件を起こしながらも、被害者から告発されていないという不思議な容疑者に、ある法学生が関心を持ち接近。2人で被害者の女性たちに会いに行きます。

この作品はかなり変わっていて、物語性はないと言っていいと思います。景色や映像が主役という感じで、大きく変化しない風景の中、静かに淡々と、各地で似たような台詞が繰り返されます。「何を見せられているんだろう…?」という気になったし、正直今まで見た映画の中で一番意味不明でした…。私は途中から、映画というより「現代アートの映像作品」という感覚で見ていました。

「言葉そのものだけでは意味はない」「頭で考えず、身を委ねることの大切さ・心地よさ」みたいなメッセージはなんとなく受け取りました。

トークサロンでの監督の話を聞いて少し理解ができたのですが、なんでもこの作品、台詞や脚本が先立ってあるのではなく、風景を撮りに行って、その場で思い浮かんだ言葉を俳優に言ってもらい撮っておき、それを構成して作品にしているそう。「そんなこともありなんだ…」「これも“映画”なんだ」と、視野が広がりました。


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公式のインタビュー記事も上がっていました。↓

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ムリナ


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主人公は、クロアチアの島で暮らす少女。機嫌が悪いと暴力を振るう束縛的な父と、そんな父にあらがわずに半ば諦めている母のもと、フラストレーションを抱えています。大企業を経営する父の知人が島を訪れた際、外の世界へ出て行きたい主人公は彼を慕い、一緒に外へ連れ出してほしいとお願いして…という物語。

主人公は日々、父と海に潜り魚を捕らえるので、泳ぎも潜りも得意。海上・海中のシーンも多く印象的でした。

また、夫を立てるという姿勢なのか諦めた様子がある主人公の母の姿は、私自身の母ともとても重なって見えて、外の世界へ出て行こうとする主人公も自分と重なるところがあり、とても親近感を感じ切なくなりました。それだけ、普遍的な物語になっていたとも言えます。

タイトルの「ムリナ」はウツボという意味だそう。劇中でもウツボは何度か登場するし、ウツボは危機に陥ると自分の体を噛みちぎってまでも逃げるということに、家族を犠牲にして外へ行こうとする主人公を重ねたと監督が話していました。


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普段なかなか見れない作品との出会いや、トークサロンでの監督の話など、いろんな収穫を得られた映画祭。来年以降もチェックしていきたいと思いました。そして願わくば、今回見たかったけど見られなかった作品も含め、日本の映画館でもいろんな作品が上映されていくといいな。