ふーみんLABO(仮)

26歳女が「納得できる自己紹介」を目指して執筆中。エコ・節約・映画など、私の頭の中を可視化するため、とりあえず色々書いてみようという実験です。

古き良きアラブ文化を垣間見る。横浜ユーラシア文化館でサウジアラビアの企画展を見てきた。

現在、横浜ユーラシア文化館で「サウジアラビア、オアシスに生きる女性たちの50年」という企画展が行われています。先日、日本大通り周辺から駅に向かう時にポスターを発見して、アラブ好きとしては「行くしかない」と思い、早速行ってきました。

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横浜ユーラシア文化館とは

みなとみらい線日本大通り駅から上に上がるとすぐのところにある博物館です。建物は、1929年に横浜中央電話局として建てられたそうで、重厚な雰囲気があります。

建物の中に複数の展示室があり、

  • 4階:横浜都市発展記念館 常設展
  • 3階:企画展示室
  • 2階:横浜ユーラシア文化館 常設展

という構造になっています。企画展のチケットを買うと、常設展も見られるようになっています。企画展のチケットは大人300円と、比較的リーズナブル。土曜日は高校生以下は無料だそうです。

www.eurasia.city.yokohama.jp

 

横浜ユーラシア文化館

東洋の研究をした学者さんが横浜市に寄贈したというコレクションが展示されています。紀元前のものまであるし、地域も幅広く、これだけ幅広いコレクションが一箇所で、かつ近場で見れるとは。世界史を勉強していた高校生の頃来ていたら、もっと楽しめただろうな。

 

横浜都市発展記念館

明治期以降の横浜の歴史をみることができます。埋め立て地や市域が拡大したり、関東大震災第二次世界大戦中の空襲を経て今の市街地ができていく変遷を知ることができます。

 

サウジアラビアの村を研究した女性文化人類学者の成果と、今をたどる。

今回の企画展は、1960年代末からサウジアラビア西部のオアシスの村で長期調査を行なった片倉もとこ氏(1937〜2013)の研究や、それから半世紀経った今、追跡調査をした研究結果などが展示に反映されています。

▷詳しくはこちらから。

イスラームの聖地メッカ・メディナを抱え、政治・文化的にも保守的で、ついこの間まで観光目的では行けなかった国・サウジアラビアイスラーム教徒の巡礼ビザや、ビジネスなどのビザしかなかった。)そんな国の半世紀前の調査なんて、とても大変だったろうなと思います。

でも一方で、そんな地域の風俗を調査できたのは女性だったからかなとも思います。特に今回の企画展では女性の装いに関しての展示が多く、そういうところに迫れたのは同じ女性同士だったからだと思います。また、彼女が結婚していて子どももいたことが、現地で信頼を得るのに一役買っていたと、企画展をまとめた書籍に書かれていました。

アラビア半島では、女性は家族以外の男性がいるところでは髪を覆ったり、体のラインが出ないようにしたりすることが多いです。

現在サウジアラビアでは、家族でない男女が同席したりすることもタブーとされていて、レストランの席は「家族用」と「男性用」が分かれているそう。そういう地域であることを考えると、調査をしたことのすごさをより一層感じます。

そして一方で、これまで禁止されていたものが最近解禁される動きもあります。映画館が解禁されたり、女性が車の運転をするのが解禁されたりと、今変化の真っ只中とも言える状況です。

 

実は女性のベールは「自由」だ、ということ。

企画展の副題についている“「みられる私」より「みる私」”という言葉。私はおそらく片倉さんの著書で読んだことがあったのですが、展示をみて久々に思い出しました。

イスラームの日常世界 (岩波新書)

イスラームの日常世界 (岩波新書)

 

女性が外に出るときは頭にも体にもベール類をまとうのは、不便に見えたり、自由が制限されているように見えるかもしれません。

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現地の男女の服装を模したマネキン。

でもベールをまとうことは、他人・男性にみられる対象としての意識が必要ないということでもあるのです。(実際、他人同士で、男性が女性を直視するのは失礼らしいです。)そして、見られないからと言って手抜きをしているわけではない。ベールの下でどんな服を着ているのか、昔のものも、今のものも展示がありました。どれも色鮮やかで驚きました。

私が以前アラブ首長国連邦UAE)で現地の同世代の女子と交流したときは、真っ黒の外套“アバヤ”の下でミニスカートを履いている子もいたし、髪を明るく染めている子もいました。それはきっと、「自分がしたいからしている」ということ。「ミニスカの方が男ウケする」とかでは全くない。ベールの下は「こう見られたい」「こうしないと」という意識からは解放されているのです。

留学先の寮で同部屋になったサウジアラビアの女子との等身大の交流を描いたマンガ「サトコとナダ」でも、そんなエピソードが描かれていたのを覚えています。

サトコとナダ(1) (星海社コミックス)

サトコとナダ(1) (星海社コミックス)

 

私は、「女性として見られる」こと、「女性として求められることがあるということ」に疑問や抵抗を覚えることもあるので、アラブのこういうあり方は面白いなと思うし、とても惹かれます。

また、夏は50度前後まで気温が上がり、日差しもきつい灼熱のアラビア半島では、肌を出してしまうと暑いのです。女性の黒いアバヤなどは、遮光にもなって意外と涼しかったりもします。ベールにはこういう機能的な理由もあり、ただ不自由なだけではないのです。

 

実は色彩豊かな文化でもある

「女性=真っ黒」とも思われていそうなアラビア半島の文化ですが、上で書いたような女性の服をはじめ、色彩豊かな文化があります。

ポスター写真で使われているマスク「ブルグア」も、ビーズやコインがふんだんに使われていてカラフルです。

これまであまりアラビア半島の文化にイメージを持っていなかった方にぜひ、見て欲しい展示だと思いました。

 

今は現地でも失われつつある、昔ながらの文化を感じる

女性の装飾品や、ヤシの木の葉などから作られた日用品など、今や現地でも失われつつある「古き良き時代のもの」が色々と展示されていました。

また、半世紀前の調査と、それの追跡や比較のため最近行われた調査が比較もされていて、以前撮られた写真に写り込んでいた人を探したり、撮られた場所を特定したり。日干しレンガでできていた家はコンクリート製になり、井戸まで汲みに行っていた水は水道から入手できるようになり。

「井戸が男女の出会いの場にもなっていた」「携帯電話が普及したからお隣さんとも携帯で話すようになって、行き来が減って寂しい」というような現地の人の話も紹介されていて、現代技術と引き換えに対面での交流が減ってしまうのはどこでもあるんだなあと思いました。

 

展示の規模はそれほど大きくなく、じっくり見ても30〜40分程度で見られる企画展でしたが、私としてはとても面白くて見応えある展示でした。

現地の人と長く親交を持ちながらも、研究者として客観的立場でもあろうとしたという片倉さんのあり方や研究への姿勢にも共感し、かっこいいなと思いました。

お金的にも気軽に行けると思うので、おすすめです。12/22までやっています。

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