「風の谷のナウシカ」、映画館で見てきた。この物語に今が重なるとは。
今日から各地の映画館で見られるジブリの過去の名作たち。楽しみすぎて、初日から駆けつけてしまいました。見たのは、「風の谷のナウシカ」。
ナウシカは、物心ついた頃には見ていた作品。繰り返しビデオで見ながら、ちょうど良い大きさの椅子を使って、ナウシカが乗るメーヴェの真似をしていました。懐かしい。
生まれる前の1984年公開とのことで、映画館で見るのはもちろん初めて。作品自体見るのも久々でした。今の自分が見てどう思うのか?ということにも興味がありましたが、やはり名作だけあって示唆深く感じる場面が沢山ありました。
菌に怯える今が重なる。
一番驚いたのは、「腐海の近くでは有害な臭気が漂っているので、マスクをしなければいけない」という物語の設定。菌が繁殖すると胞子や臭気を発して、人間が住める環境ではなくなってしまうのです。
この設定が、今コロナ禍で菌に怯えたり、特に人と接する時は「マスクをしないとまずい」というような感覚を多くの人がもっている状態ととても重なって見えました。
ナウシカが、濃い臭気の中マスクを取って、墜落しかけている飛行船に乗るおじいちゃん(?)たちに語りかける場面では、「マスクをつけて!!」とおじいちゃんたちが叫んでいて、今との重なりように「すごい…」と思ってしまいました。
一方でナウシカは、皆が有害だと思っている菌や、凶暴で怪物のような虫たちと共存しようとしています。武器や力を使わずに虫を森へ返したり、綺麗な水で育てることで臭気が出ない状態で菌を育てています。そんな姿はある意味「withコロナ」と言っている現状とも重なりました。
そして、物語の中での菌は、人間が遠い昔に破壊した環境を分解し、無害な土や水を作っているとわかります。現実世界でも、納豆菌や乳酸菌など、体に欠かせない菌や役立てられる菌もあるわけで、「菌=悪」ではありません。今は臭いやバイ菌などに過敏になっている日本社会。うまいこといろんなものが共存できるといいなと、改めて思いました。
また、「巨神兵や王蟲の存在は、人間の力を過信する現代社会への警鐘である」みたいなことはよく言われますが、こういう「菌」というものに現代の姿が見出せてしまう時がくるとは、なんとも不思議なものです。
「身をもって止める」場面がかっこいい。
物語の中で前から好きな場面があります。序盤、風の谷がトルメキア軍に攻め入られた時に、父を殺されてしまい怒りに任せて剣を振るうナウシカと、発砲しようとする軍の兵士の間に剣士ユパが入る場面。ナウシカが振るう剣を、ユパは手で受けます。彼の流れる血を見てハッと正気に戻るナウシカ。
この「身をもって止める」という場面は、何回かあるしどれもとてもグッとくる自分がいることに気付きました。ナウシカも、敵の銃撃を止めるため、飛行船やメーヴェの上に立って身を挺する場面が何度かあります。照準を合わせる相手はそれに怯んでしまう。この、凛としたかっこよさに憧れます。この、強さと優しさを併せ持ったナウシカの姿は、私の理想の人間像・女性像であり続けている気がします。
BGMが見事。
この作品の随所で流れる音楽は、久石譲の音楽の真骨頂と言ってもいいでしょう。音楽を聴くと、それぞれこの作品を見る、幼稚園生くらいの自分と今の自分がつながるような気がして、とても感慨深かったです。なんなら、オープニングで涙出ました。やっぱり、音楽の方が記憶に密接なのかもしれません。
物語は3つの国が絡み合い、初見だけで理解するには結構複雑です。そんなものを、幼稚園の頃なんかによく見てたなと思います。そもそもなんで見始めんだろう…。
でも、歳を重ねて何度見ても、理解が深まる名作です。今回見てようやく、物語の背景が理解できた気がします。良いものを見せてくれていたことに感謝しつつ、今後も機会があれば見直していきたい作品です。
映画館としても、過去の名作を見れる取り組み、続いてほしいなあ。どれだけ展開がわかっていても、大きいスクリーンと良い音響で、集中して作品を見れる環境は良いものです。