「全部あるじゃん」にハッとした。“「横浜の未来」シンポジウム”で考えたこと。【レポート②】
先日、“「横浜の未来」シンポジウム”に行ってきた話を書きました。
この記事の続きとして、今回は座談会・質疑応答での話と、全体の感想などを書いてみます。
登壇者の座談会・質疑応答
プレゼン以降は、登壇者や会場に来た参加者の質疑応答を合わせ、割とざっくばらんに話が進みました。
印象に残った話と、それに対して思ったことを挙げてみます。
- カジノ単体ならまだ検討しても良いが、IRは負担が大きくなる。(木村氏)
→個人的に、人口が減っていくこれからの時代は、新しい建造物という“ハード”に投資する時代ではないと思っています。そして、金子氏のプレゼンで言われていたことですが、今は人口が増えているわけではないので、「タワマンで地方の町が1つなくなる」時代。IRという大規模な開発は、得るものよりも負担・失うものの方が大きいのではないかと思いました。 - せっかく場所があるのなら、市民から「横浜に足りないもの」の声を集め、作る方が良い。法や政府の許可のもとがんじがらめでやるよりも、自由にやれた方が良い。(木村氏)
→なるほど確かに、と思いました。IR整備法の疑問点(なぜ国内に3計画なのか?自治体と政府の適切な距離が保てるのか?)も理解できたので、そういう法のもと動くよりも、もっと自治的に、市民の声のもとの開発が行われた方が良いなと思えました。 - 住民の意思が介していない、会議場やホテルのような施設が「公共施設」だと思われてしまっている。(山本氏)
→とても共感。“公共”が、与えられるものになってしまってます。最近やっているゴミ拾いでも、「ゴミを捨てる人は、町が自分の&みんなの空間という意識がないんじゃないかな」と感じています。本来は、自分たちで作るものなのに。町レベルでも政治レベルでも、「自分が力になれる」という意識が持ちにくい社会なんだよなあと感じています。
シンポジウムの終わりにも、横浜の都市デザインに深く関わった方の言葉としてこんな紹介があり、この言葉にもとても共感しました。 - タワーマンションなどにはコミュニティがない。長い廊下を作らないなど、人とできるだけ会わない動線を作るのが「マンションのうまい設計」とされてしまっている。
→タワマンではありませんが、築30年ちょっと経つうちのマンションもまさにこれ。長い廊下がありません。プライバシーや独立感?のためこういう作りになっているみたいですが、「こういうことがコミュニティのあり方にも繋がっているんだ」「だからご近所づきあいが続きにくいのかな」と自分ごととしてハッとしました。 - みなとみらいの計画は拡張の時代にあったので、それなりの正義があった。今は周囲の地域の破壊に繋がってしまうので、今の姿は失敗だったのかもしれない。都市破壊をやめる施策を横浜がまずやってほしい。(北山氏)
→木村氏のプレゼンで「みなとみらいは横浜にとって何なのか問われている」という指摘があり、それを受けての質問の応答としての話でした。
横浜市民でも、世代によって「みなとみらい」をどう見ているかは違うと思います。私のような90年代生まれだと、物心ついた頃には大体今のような感じの地区でした。
しかしもっと上の世代だと、みなとみらいなどなかった頃の横浜をより強く記憶しているだろうし、きっと計画ができた頃を知っている方たちにとっては、“みなとみらい”なんて「何じゃそりゃw」って感じだっただろうなあと想像します。
そして、物心ついた頃にはあった世代としては、「みなとみらいをどう捉えるかとか、考えたことなかった」と気づきました。そして「失敗だったのかもしれない」との言葉を聞いて「まじか」と驚きました。でも、こういった捉え直しや評価が今こそ必要とされているのだなと思いました。
全体の感想・考えたこと
「全部あるじゃん」という言葉にとても納得
木村氏がプレゼンで言っていた、「IRが求めるものは、横浜に全部ある」という指摘が、私にとってはこのシンポジウムの一番の収穫でした。この話を聞くまで、IR構想に対しては「悪くないとも思うけど、手放しに良いとは言えなさそう」という感覚があったのですが、横浜市のIR誘致になんとなくあった違和感はこれだった!と思いました。
また、「全部あるじゃん」という話で思い出したのは、私が思う、横浜市や神奈川県の良さ。大都会もあれば、それなりに田舎もある。ショッピングできる場所も、温泉もある。山も海もある。新しい町も、歴史ある町もある。そういう「なんでもある」ということが、なかなか便利だし好きなんだよなあと思い出したのです。
だからこそ、何もないところに作ることを想定されているようなIRに頼らなくても、何かしらできるし、やっていかなきゃな、と思いました。
「社会正義が産業を作る」という言葉に共感&勇気付けられた
金子氏のプレゼンで、IRやカジノに頼らなくても、新しい産業は作れるという話の中で、「社会正義が産業を作る」という言葉があり、とても共感しました。
日頃から、エコやソーシャルビジネスなどに関心があるので、テレビ番組などのエンタメも、すべての産業も、これからは“ソーシャルグッド”なものこそ応援したいし人気になる時代ではないかと思っています。
でも一方で、そういった“良いこと”を経済的に持続させる難しさもなんとなく感じていたので、社会正義が産業につながるという話は、なんだか背中を押された気分でした。
カジノ云々じゃなく「まちづくり」の問題。コンソーシアムのあり方・軸に共感
今回のシンポジウムは、「カジノやIRへの反対」というものではなく、「横浜のこれからの“まちづくり”を考えよう(その中でIRをどう捉えるか考えよう)」という軸だったと理解しています。とても未来志向で建設的で良いと思ったし、こういった動きには参加していきたいなと思いました。
その点、後日の神奈川新聞の以下の記事で言われているようなテンションとは差を感じます。確かに金子氏などは政権や市政を明確に批判していましたが、全体像としてはややミスリーディングというか、恣意的だと感じます。直接参加してよかった。
新しい“公共”を実践・参加していきたいと改めて思った
久々にマクロ的視点で、都市デザインやまちづくりについて話を聞いたり考えを深めたりする機会になりました。
“公共”に関しての話も、以前から考えていたことと一致したのでとても共感しました。自分が参加していく、という意識を持っていたいなと改めて思いました。
おまけ:IRについては、反対になった
今回のシンポジウムで、私の中では結構IR構想についての論点が整理されました。
参加するまでは、ドバイやシンガポールなどの都市国家や摩天楼的なものが何故か好きというのもあって、「悪くないんじゃないか」とも思っていました。でも一方で「手放しで良いとは言えなさそう」という感覚でいました。
で、今回得た論点やそれに対しての感覚で、
- 「全部あるじゃん」
- もうハードの時代ではない
- IRでの利益は、税収もあるかもしれないが、外資に持ってかれるだけ。土地やお金の投資ができるなら、もっと市民の声を吸い上げた形のものの方が長続きする。
という点で、IR構想に対しては反対になりました。
メディアが結構鮮明に反対姿勢で報道していたり、反対派の運動が割と活発だったりして、なかなか中立的立場から情報収集するのが難しい問題な気がしていますが、注視していきたいと思います。
追記:当日の資料を貼っておきます。(ビラの表は記事冒頭のもので。)
関連記事